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敏洋’s 昭和の恋物語り

[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(十四) 

2017年06月17日 外部ブログ記事
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「討ち取ったり!」
 体を起こしたムサシががなり立てた。
見事に策が当たった。しかしこれが裏目に出た。
烏合の衆的な若い門人たちが
「幼子を手にかけるとは、何ごとか!」
「木の上に潜んでの襲撃とは、卑怯なり!」
と、いきり立った。
泥田の中を逃げるムサシを「ムサシ、許すまじ!」。叫び合いながら一斉に追いかけた。

 ある者はムサシ同様に泥田の中を走り、またある者はあぜ道を駆けた。
決戦の場、洛外下り松に通ずる街道に身を伏せていた他の門人たちも、その怒号を聞きつけて一斉にムサシに向かって駆け寄った。
 すぐに多数の門人たちに囲まれてしまった。
四方八方から斬りかかられては、一本の刀では危うくなってしまう。
咄嗟に小刀を抜いたムサシ、両手でもって襲いかかる門人たちの刀を振り払った。
強靱な腕力を持つムサシならではの戦法、二刀流が生まれた。

 風車の如くに、ぶんぶんと大刀を振り回しながら、門人たちを寄せ付けない。
一歩二歩と歩を進めながら泥田から抜け出たムサシ、息を切らす門人たちを後目に、脱兎の如くに駆け出した。
唖然とする門人たち、まず泥田の門人が脱落した。
続いて、あぜ道を駆けた者たちも息が上がり、ついには三人だけが追い駆けることになった。

 突如踵きびす返したムサシ、「ウオーッ!」と怒声を浴びせながら斬り付けた。
三人は抵抗する間もなく切り倒されてしまった。
ムサシに追いついた他の門人たちも、その様を見て戦意を失ってしまった。
誰からともなく「ここまでだ…」との声が挙がり、その場に泣き崩れた。

―終わった、すべて終わった。これで仕官の道も開けるというものだ―

 そう思うと、次第に安堵の気持ちが湧いてきた。
頬が緩み笑みもまた浮かんできた。
しかしそのすぐ後に、絶望にも似た思いが襲ってきた。
言いようのない疲労感に襲われつつ歩くムサシの足取りは重かった。
幼子を手にかけてしまったという事実が、手に残る感触が消えなかった。

 立ち返ったムサシを待っていたのは、予想だにしなかった非難の声だった。
「いたいけな幼児までをも斬り殺すとは、なんと非道な男なのか!」
 ムサシ一人対多数の門人という図式であるのに、ムサシを擁護する声はなかった。
ムサシをけしかけた商人ですら、「やり過ぎましたな」と無碍もない。

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