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息子がやって来た　

2017年02月18日
テーマ：シニアライフ

家庭教師をしている息子が、「教えている受験生達が志望校に合格した」と言って、ちょっと暇になったらしく、遊びにやってきた。


20歳くらいの時から、一人暮らしを始めて居るし、現在は私が名古屋に越してきたので、会う機会もそうは無い。

息子の好物に関するセンサーも、最近はあまり働かない。

久々に会う母親なんて、何を食べさせようか、位のもてなししか思いつかないのだ・・。


幼少の頃から、お肉好きで育ってきたので、スーパーなどで、ステーキの安売りを見かけると、通り過ぎられなかったものだ。

今回も、お肉をどっさり買ってきたけれど、考えてみれば30歳半ばの大の男が、お肉に飢えているわけも無し。



来るなり、「何か食べる？」と訊くと、「たらこのスパゲッティ」という。


どうやら、いつも私がこんなに簡単な料理はない、と豪語しているかららしい。


只、スパゲッティを茹でて、その合間にたらこ（正確には明太子だけど）の皮を外して、しその葉を刻むだけ。


後は、茹で上がったスパゲッティをざっくりと大きなフライパンで炒めて、たらことしその葉を放りこむ。

味付けも、明太子の味のみで、食べる前にタバスコを振りかけるだけ。


この、雑さ加減が、息子にとってのお袋の味らしい。


一度、お嫁さんに指南して作って貰ったら、たらこが綺麗にほぐされていて、熱もきちんと通っていて、ちょっとイメージが違ったのだとか。



本を余り読まなかった息子が、村上春樹の「職業としての小説家」という本を、ポケットから取り出した。

お母さんとの話題造りに、途中で買ってきて、新幹線の中で読んできた、という。


息子の名古屋滞在時間は、一昼夜にも満たなかったけれど、無口な主人と二人暮らしの私には、笑った総量が一月分くらいあった気がする。


私達二人の馬鹿話を、横で聞いていただけ、と言った風な主人だったが、「今回は、ビックプレゼントだったな」と、一言呟いていた。


無口な人が口にする、一言の総量は、ハイテンションでしゃべり続けた私の、1000倍くらいに値したかも知れない。

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