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独りディナー
スウェーデンの思い出、その三
2016年06月06日
テーマ:旅
リンチェピンという街は、宗教的に歴史のある古い場所らしかった。
其処からは、ガイドさんを頼んで色々と説明をしてもらうことになった。いつものように、お国訛りの英語でガイドしてもらっても、さっぱりわからないのだが・・。
バスに乗って、湖畔の素敵な館を見学したけれど、お食事が美味しかったこと位しか覚えていない。
バイキング形式で好きなものを選ぶのだけど、シーフードが沢山あった。ヨーロッパで食べるニシンとかイワシは本当に美味しい。
フライして、沢山の野菜と一緒にマリネーしたのが特に気に入って、何度もお代わりをした。
ドイツから来たウルリケさんと、小説の話をしたのは楽しかった。
彼女は、トーマス・マンが好きだというので、私が突然思い出して、
「そういえば、トーマス・マンの『ヴェニスに死す』の映画に出てくる美少年は、スウェーデンの俳優だったわね」と言うと、彼女は即、
「そう。ビョルン・アンドレセン」と答えたのは、さすがヨーロッパの人だと思った。(私は今、ウィキペディアで調べたのだが・・)
彼らにとっては、私たちのキムタク位に、馴染みのある名前なのだろうか。
その夜は、ウエルカム・レセプションが、市の美術館で開かれた。
休館日だったからなのか、夜だからなのか・・。
パーティーのある広間まで、ゆっくりと絵を見ながら、思い思いに歩いて進んでいく。
展示されている絵そのものには、特に印象に残るものはなかったけれど、静かな美術館に身を置くだけで、気持ちが穏やかになってくる。
パリに住んでいるドイツ人のアンドレアさんには、前年パリでお世話になったので、今回日本からスカーフを持参してプレゼントしたら、早速そのスカーフを巻いてレセプションに現れたのも、さすが社交慣れしている人だなと、感心した。
パーティの後は、主人と二人でレストランに入った。
レセプションはお食事が出ないので、大抵その夜は同じ国の人と交流することが多いのだが、その年に限って日本のお仲間とはぐれてしまったのだ。
道に面した、オープンテラスのお店だったので、色々な国のグループの人たちが、通りを歩きながら、私たちに声をかけて行った。
テラスと言っても、屋根があって、その屋根の下の縁に、ずらっとヒーターが並んで取り付けられている。
寒い季節でも利用できる、対処法なのだろう。
フィンランドの知人が「冬になると、夜が明けるのは9時位なので、朝学校へ行く頃はまだ暗いのです。そして、午後3時には日が暮れるから、下校時間はすでに真っ暗で・・」。と言っていたけれど、スウェーデンも大差ないと思われる。
其処で選んだシーフードのメニューも、美味しかった。
まず生のまま、海老やホタテやお魚が、野菜と一緒にお皿に盛られて出てくる。そのあと、高温に熱した大き目な石板が、テーブルの真ん中に置かれて、そこで各々が焼いていくのだ。
石板焼き、と言う感じかな・・。
しかし、全般的にスウェーデンの物価は高い。
翌日のレディースプログラムは、少し田舎方面へ、路面電車に乗って行った。
大きな牧草地があって、その中に子供たちが遊べるような広場が沢山あった。
「素晴らしいわね、広々として・・」と、私が何の考えもなしに言うと、「日本にも、こういった大きな公園はあるの?」と誰かが訊いた。
「え〜っと・・」と、私が考え始めると、何と、一緒に歩いていた三、四人が、一斉に黙って耳を傾けるのだった。
何で、私に訊く・・。そんな事、日本語だってよく知らないから、簡単にこたえられないのに・・。
と、思いながら、まず頭に浮かんだのは、子供たちとよく行った、立川の「昭和記念公園」だった。
「そうね。大きな公園はあるけれど、ピクニックとか、何かで使用するには、事前に申請しなくてはいけないと思う」
お仲間たちは、真剣に聞いている。日本の庶民の生活について、まあ興味はわくのだろう。
私だって、タイとかコロンビアとかから来た人の雑談だったら、面白いかも、と期待してしまうだろうから・・。
それにしても、何で私がこんなはめに・・。
他にも、日本から二人の夫人が参加していたのだが、一人は帰国子女だし、一人は通訳の仕事をしていた人なのだ・・。
私は、たまたま年長者というだけで、上品な二人は何かにつけて私を立ててくれるから、そこででしゃばって私を助けよう、等とは思ってもみないらしい。
「申請して、使用する時には、お金も取られるの?」と続けてきかれて、お役目はまだまだ終わらない・・。
「公的な施設なら、無料だと思う。ただし、休日は混んだりするから、早めに予約する必要があるかな」
ホントかよ、と自分に突っ込みを入れながら、汗だくである・・。
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