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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (四十七) 

2016年05月22日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



この一件は、その日の内に社内に広まった。
噂が噂を呼び尾ひれがついた。

「女性二人に二股をかけて、手玉にとった」
「ナイトクラブで酔わせ、レイプまがいの事をした」

果ては、妊娠した女性を捨てた男というレッテルを貼られてしまった。
そんな男をかばう者もなく、特に女性社員からは、白い目で見られた。

さすがに、男も退社せざるを得なくなった。
「このことがなければ、元の部署に戻れたのに、残念だ」 という人事課長の言葉が、男の頭の中でグルグルと回った。

あの忌まわしい日から 1週間近く経ったが、麗子の父親からは何の連絡もない。
無事に戻ったかすら、わからない。
父親の来社で、全ての歯車が狂ったように思える男だった。

―俺が何をした。麗子の家出にしても、厳格な父親に反発してのことじゃないか。
そんな思いが、いつまでも消えないでいる。

―麗子にしてもそうだ。別れると言い出したのは、あいつの方だ。
出世レースに敗れた俺に見切りを付けたのは、あいつじゃないか。
それを突然やって来て、あげくに家出だと。冗談だろ。

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