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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (三十九) 

2016年04月25日 外部ブログ記事
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「お上手なんですね、ダンス」とのミドリの問いに、「うん、大学時代に、ね。少し」と答えた。
「大学で学んだことで、一番役にたっよ」と付け加えると、はじけるような笑顔を見せるミドリだった。
女性との触れ合いが欲しくてとは、口が裂けても言えない。
そういえば、麗子との間が進展したのも、ダンスをしてからだと思い出した。

男は、悪戯心で背中に回した手に力を入れ、少し引き寄せた。
「もう少し、僕に寄りかかるようにして。背筋をピンと伸ばしてね。
そうそう、その方が綺麗に見える。
ダンスは、他人に見てもらうものだから」
と、勝手な解釈をミドリに教えた。

「それからね、顔を上にあげて。足は何度踏んでもいいから。
とに角、練習だ。きっと 役に立つからね」
「はい」と、ミドリは言われるままに身体を寄せながら、顔を上げた。

心なしか、上気しているように見える。
次第に、男の悪戯心が膨れあがった。
「どうしてだろう、会うたびにチャーミングになっていくね。うーん、綺麗な髪だ」

ミドリの耳元で囁いた。
ミドリの耳たぶが真っ赤になっていく。
無言のまま、ミドリの身体が男に寄り添ってきた。
予想以上のミドリの反応に、男の心が騒ぎ始めた。

軽い悪戯心からのことだったが、ミドリの動揺は激しかった。
胸の鼓動が激しく波打っている。
添えている二人の手が汗ばんできた。
二人きりの部屋でのダンスは、ミドリには刺激が強すぎた。

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