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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](十六) 

2016年03月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 いっそのこと、会社を辞めるか。会社にしても、それを望んでいるだろう。
そんな思いが頭を過ぎる。けど‥‥、と思い直す男だ。
かつての上司である課長の、「おおや、顔色がいいな。結構、結構」の嫌みも辛い。
同僚からの「我慢、我慢」という言葉にも、次第に険を感じ始めてきた。
それにしても、あの資料を置き忘れてしまったことが、悔やんでも悔やみきれない。

「座布団の下に隠れていましたので、気がつくのが遅れました」との電話だった。
 翌日まで部屋の片付けをしないのか、と思いはしたものの、それを口に出すわけにはいかなかった。
しかし今にして思えば、おかしなことばかりだった。
第一に、座布団の下にというが、置いた覚えはない。
テーブルの上にこそ置かないが、確かに横に置いていたはずだ。

第二に、いつもの小料理屋ではなく、男にとっては初めての店だった。
誰かの馴染みの店だとは聞いたが、契約成立の前祝いとしては不自然に感じられた。
なにかそこに意図的なものを感じはするが、それとてこの失態を弁じられるものでもない。

 男はベッドから立ち上がると、ミドリの名刺をもう一度見直した。M貿易とある。
漫然と見ていたせいか、その住所が男の会社から百メートルと離れていないことに、今、気がついた。
 今一歩結婚に踏み切れない男には、その理由が社内恋愛を認めていない会社にあると考えていた。

「会社を変わらないか、M貿易なんかどうだい」
 思わず口をついて出た。
「いやよ、そんなの。寿退社ならいざ知らず。なんだか解雇されたみたいじゃない」
「いやならいいよ。今の状態で、麗子が良いというならそれでもいいさ」
 その時に初めて、麗子と呼び捨てにした。
しかし表情の変化はなかった。
聞こえなかったのか、或いはそう呼ばれることを待っていたのか、神経質な面のある麗子なだけに意外なことに男は感じられた。

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