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芸術祭に参加した思い出 

2016年01月22日 ナビトモブログ記事
テーマ:シニアライフ

5年前の春、私は非常勤で通っていた大学をリタイヤした。

シニアライフには、「キョウイクと、キョウヨウが大事」とよく言われる。

キョウイクとは、今日行くところがある。
キョウヨウとは、今日用事がある。


当時、私も暇になるだろう今後の日々を思って、上記の二つを念頭に、色々探し始めたのだった。

名古屋では、月に一度「市民だより」といった新聞が配布される。

そこで見つけたのが、「ベートーヴェン第九交響曲の合唱団募集」のお知らせ記事であった。

今になっては詳細は忘れたけれど、早くから定期的に集まって練習をして、年末には名古屋フィルハーモニーの演奏会で歌うらしい。

女性の応募者は多いので、男性歓迎とも聞いた。


いよいよ、募集の時期が来たので、練習に出かける都合もあるから、一応主人にその記事を見せたのだが・・。

「こんなの、止めようよ・・」と、即刻却下。

「えっ〜?」である。

まさか、反対されるとは思っていなかったので・・。

「こういったところに顔を出せば、君はすぐ喧嘩になるよ」

そうか。考えが甘かったか・・。

いつもそうなのだ。猪突猛進型ですぐに決めつけてしまって、違う観点から見ようとしない。


考えてみれば、確かにそこは、アマチュアの人達の集まりであった。

ドイツ語で歌うにしろ、余り人には言えない程度だけど、私はドイツ語圏で生活をしたこともあるしなあ・・。

私は、まあ場違いだったろう・・。


無口な主人は普段、余りうるさいことは言わないので、まあ私は好き勝手をしているけれど、結構ポリシーのはっきりしている人なので、向こうが反対することには、家庭平和のため押し切らない様にはしている。

意気消沈してしまった私は、その紙面をぼんやり眺めていると、

「市民芸術祭参加者募集要項」という記事が目に入った。


半分やけっぱちで、

「じゃ、こっちはどう?」と、その記事を見せてみると、

「これなら、やってみても良いんじゃないか?」と言う。

成程。


それからは、楽しかったなあ。

まず演奏のプログラムを組み、ホールを探し、マネージメントを探し、企画書を作って、応募してみた。

シニアライフの暇つぶしだから、まずお金は極力使わない。

ホールはキャンセル料がかからなくて低価格で借りられる、公共の文化会館を予約。

マネージメントにも、芸術祭に応募するので、企画書が却下されたらコンサートはキャンセルしますが、という条件で頼んだ。

企画書を制作するのが、一番楽しかった。


かねがね私は、ショパンの24の前奏曲と、スクリャービンの24の前奏曲とのつながりに注目していたので、異例なプログラムながら、両者を一番から一曲ずつ、交互に比較演奏する、というプログラムを組み立てた。

名古屋までは来られない、東京の友人たちはこぞって「面白そうなプログラムねえ」と言ってくれた。


芸術祭に参加すれば、市から補助金が出るので、まあ赤字コンサートも免れるだろう。

幸い、参加出来る運びとなり、10月の下旬だったか、演奏会を開催した。

自分で宣伝は殆どしなかった。

私としては、リサイタルができればそれで充分だったから。


本番ひと月前位に、主人のお伴で10日位海外に行く羽目になった時も、ヤマハのご厚意で、ワルシャワのヤマハ支店で練習もした。


そして、いよいよ本番当日。

開始直前に、「それじゃ、客席で聴いてくるから・・」と言って楽屋を出て行こうとした主人に、

「いつも、これが最後、と言い続けているけどさ。コンサートするのは、もう少し続けてもいいかもねえ・・」とちょっとハイになっていた私は、甘ったれたことを言ってみると、主人は、

「客席の様子を見たら、考えが変わるよ・・」と言う。


成程。

舞台に出て行って、お辞儀をして客席を見たら、其処にはまるでリハーサルかと思える程の人しか、座っていなかったのだ。

やはり、気は沈むものである。


演奏以前に、あの気負ったプログラムは、反響までには届かなかったのだ。

芸術祭、だというのに・・。

専門的過ぎる内容だったからであろうか。


聴きに来てくれていた友人の一人が、「もっといろいろな方に聴いてもらいたいから、又このプログラムで演奏会しない?」と言ってくれた。


丁度彼女は、お義母様からサロンコンサートができる邸宅を相続したところで、そこで私のピアノリサイタルを、最初のコンサートとして開催してくれたのだった。


それから、其処のサロンではもう、何度演奏会をさせてもらったか・・。


人生はどう転ぶか、わからないものである。



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女もつらいよ、ですね。

シシーマニアさん

師匠、コメントありがとうございました。

楽しい文でしたか。そうおっしゃって戴けて、とっても嬉しいです。

自分では、「客席の様子を見たら、・・」といった主人の件は、思い出しながら笑ってしまいましたが・・。

ご自分を笑いの俎上に載せるのが本領、ともいえる師匠がお手本なのですが、笑うセンスはあっても、笑わせるセンスとなると・・。

そうですね。
だらだらと書き始めましたが、表現によっては中々面白い素材だったのかも知れません。

安売りしてしまったのかも・・。

今日は、色々な方のブログを読みながら、我が体験を思い出してしまいました。

2016/01/22 20:20:57

希望者も多くて。

シシーマニアさん

喜美さん、コメントありがとうございます。

第九は、一度は自分でも歌ってみたい、といった魅力がありますよね。喜美さんも、誘われましたか・・。

最近は、希望者が多くて、ハードルも高くなっているのでしょうか。
電話で問い合わせたところ、当地も女性は中々新規参加は難しい様です・・。

2016/01/22 20:10:10

終り良ければ

パトラッシュさん

祝着至極です。
瓢箪から駒。
禍福はなんとやら。
でもあります。
よござんした。

楽しい文です。
褒めております。
文は、こうでなくちゃーと。

意気ごみと裏腹に、見事にずっこける。
この話、組み直せば、落語になるでしょう。
(「寝床」などに、相通じるものがあります)
(ネタがクラシック音楽だから、ショパンだから、それがまた良いのです)

漫談にも使えます。
文体を少し変えれば、立派なコントになるでしょう。

シシーマニアさん、意外に、ユーモアのセンスもおありのようで。
猪突猛進に幸いあれ。
それこそが、その才質の源泉です。
(被写体として、誰かの好餌になることも、もちろんありますが・・・)

2016/01/22 16:35:22

第九

喜美さん

此処も第九の合唱団あります
昔二十年も前かしら 少し発声して
誰も入れたらしいです 誘われましたけれどお稽古が夜でしたから行けませんでした 最近は何処でも良いかもしれませんけれど音大卒業者のみになったらしいです 素人が入ると
やっぱり駄目なんでしょうね

2016/01/22 15:58:43

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