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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十九)さっ、早く車に乗って 

2015年12月10日 外部ブログ記事
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「ごめん、ごめん。さっ、早く車に乗って」
真理子の声に導かれるように、彼は乗り込んだ。
さ程にヒーターは効いていないが、外よりは暖かい。
倒れ込むように後部座席に乗り込んだ彼は、そのまま横になった。

「ありがとう、みんな。後は大丈夫だから、お詣りをしてきて」
「あゝ。それじゃ、頼むよ」
「ゆっくり走ってね」
「揺らさないようにね」
「うん、分かった」

真理子が静かに車を発進させると、皆、本殿に向かって歩き出した。
ちらついていた雪は、大きなボタン雪に変わり始めた。
「うわあ。あしたは積もってるわよ、きっと」
「白い新年なんて、ロマンチックじゃない!」

バックミラーをチラリチラリとのぞき込みながら、返事をしない彼に向かって何度も声をかけた。
「タケシさん、どう? 少しは、楽になったかしら?」
やっと、真理子の声に反応するように、彼は体を起こした。

「大分、楽になったよ。みっともない所を見せちゃったね。
ゲロを吐いたお陰で、口の中が気持ち悪いけどね」
「いいのよ、むりしなくても。寝てて、ねっ」

「いや、大丈夫。かっこ悪くてさ、寝たふりしてたんだ」
「そんなこと、気にしなくていいのに。けっこう、みんな吐いてるわよ」

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