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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十九)本日はお願いがあり、参上しました 

2015年11月21日 外部ブログ記事
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疑念の思いが消えない。
といって、そのことを口に出すことは出来なかった。
小夜子の口から出ることを、待っている訳ではない。
むしろ、聞きたくないという気持ちの方が強かった。

早苗の明るい笑い声が、茂作の部屋から聞こえてきた。
「初江さん…初江さん…」
「いやだあ、じいちゃんのエッチィ…」

相変わらず、早苗を初恋の女性だと思い込んでいるようだ。
孫に当たる早苗だ、面影があるのだろう。
それにしても、あの厳格だった茂作の変わりようは、彼には全く信じられない思いだった。

「痴呆状態になると、人生でもっとも光り輝いた時代に戻るんです」
教授の言葉が思い出された。
“呆けるということは、周囲には困ったことでも、本人にとっては至福なのかもしれない”
そんな風に思える、彼だった。

「茂作さん。本日はお願いがあり、参上しました」
あぐらをかいて、プイと横を向き、煙管に詰められた刻みタバコを不機嫌にふかす茂作に対して、土下座せんばかりに頭を下げる彼がいた。

「母親であることは、重々承知の上でのお願いです」
顔を上げることなく、続ける彼がいた。
「わたしに、是非にも小夜子さんをください。お嫁さんにしたいのです、どうぞ、お願いいたします」

武藏ではなく、確かに彼だった。
あり得ないことだと、彼自身も理解していた。
しかし何度声に出しても、やはり「お嫁さんに」となってしまう。
「理不尽なこととはわかっています。大恩あるお方の前妻だと承知しています。それを承知の上で、お願いしたいのです」

彼の傍には、神妙な顔つきの小夜子が座っている。
時折顔を上げては、茂作の顔を盗み見している。
そして女学生時代のように「お父さん、おねがいがあるの」と、すこし斜めに見上げるよな仕草を見せている。
茂作は、顔を背けたまま、不機嫌に押し黙っている。

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