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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十九)武藏と茂作とのエピソード 

2015年11月08日 外部ブログ記事
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「どこですか? 隠れていなくて大丈夫ですから。孫の武士ですよ」

庭といっても、盆栽棚と桜の木ぐらいだ。
盆栽を見るたびに、父親の武藏と茂作とのエピソードが思い出される。

秋も深まったころに、毒々しいほどに真っ赤な葉を付けた盆栽が、茂作の所に届けられた。
「わしは注文なんぞしとらんぞ。持って帰れ、持って帰れ」

けんもほろろな態度の茂作に対し、赤ら顔の業者はにこやかに応えた。
「社長のいうとおりだ、こりゃ。
話も聞かずに怒り出すぞって聞かされてましたがね。
ご心配なく、ご隠居さん。
御手洗社長からの届け物ですから。
丹精込めて世話をすれば、何年でもながめられますから」

「武藏だあ? あんな奴からの届け物なんぞ、わしには無用だ。去ね、去ね」
縁側に上がり込んで、プイと横を向いてしまった。

「ほんとに要らねえなら、中に入り込んじまうもんだ」
お供の若ものにそう耳打ちすると
「ご隠居さん。見てくださいよ、この枝っぷりを。
どっしりとした葉の広がり具合なんざ、そんじょそこらじゃ見ることはできませんて。
それにね、これだけの盆栽ともなると、それ相応のお人じゃなきゃねえ」

茂作に相応しい、茂作だからこそ盆栽の価値が上がるんだと、熱っぽく弁じた。
なにしろ、相場の三倍の値で引き取るからと武藏に言われている。
このまま持ち帰っては、出張費だけで終わってしまうのだから、業者も必死だった。

茂作にしても、紅葉の色具合といい松の枝振りといい、気になる盆栽ではあった。
畑仕事も本家に任せてしまい、茂作の仕事はほとんどなくなっていた。
子どもらの進学問題もほぼ片づいてしまい、今では訪れる者もいない。
庭に少しばかりの野菜でも…と思い始めた矢先の、盆栽だった。

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