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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十八)麻由美ちゃんが、特別だよ。 

2015年11月01日 外部ブログ記事
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哀しさで一杯になった由香里の目から、大つぶの涙がこぼれた。
彼の胸に顔をうずめながら、由香里は声を殺して泣いた。

その涙が彼の胸に染みとおる。
彼の心に、由香里に対する憐憫の情がわいてきた。

“この子も、いずれは経験することだ。
だったら、ぼくがはじめての男になってもいいじゃないか
。さきのことは分からないが、ここまで決心しているんだ”

“しかし一時の激情だけで、いいものだろうか。
一過性の恋心での決心かもしれないんだ。
ぼくにしたって、将来の約束ができるものでもないし”

彼の心は、迷いに迷った。
由香里が嫌いなわけではない。
可愛らしいとは思う。

「先生が抱いてくれないなら、由香里、誰か知らない男の人に抱かれるもん。
だって麻由美はもう、経験してるんだもん。得意満面に言うの」

「そりゃ違うよ。麻由美ちゃんが、特別だよ。
十五歳なんだよ、まだ。そんなことで張り合っても仕方がないよ」

由香里の髪をなでながら、彼は諄々とさとすように言った。

「いいかい。この先、すてきな男性が現れたとしよう。
その時きっと、由香里ちゃんは後悔するよ。
それでは、遅いんだ。
由香里ちゃんはまだ、中学生だ。まだ子供なんだよ、だか、、、」

由香里は彼の胸から体を起こすと、彼の言葉をさえぎるように唇を寄せた。
それは幼いキスではなく、大人の女性としての激しいものだった。
由香里の決心の固さを如実にあらわす、情熱的なキスだった。
舌と舌をからめ合わせる、女のキスだった。

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