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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十七)ようこそ、由香里のネバーランドに 

2015年10月08日 外部ブログ記事
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忙しなく動き回る母親に対し、父親は手持ち無沙汰だった。
話し掛けようにも、彼もまた母親の手伝いで忙しく動いている。
由香里は、部屋から一向に出て来ない。
ドアの外から声を掛けても、生返事が返ってくるだけだった。
仕方なく、お千代婆さんを話し相手にと庭先に出てみたが、家に立ち戻ったのか居ない。
外は、寒風が吹き荒んでいる。
ぶるると震えながら戻ると、由香里が土間に立ち竦んでいた。

怒った顔をしている。頬をふくらませて口を尖らせている。
幼い頃には、そのふくらんだ頬を指で押しては、由香里をさらに怒らせたものだ。
そしてそのご機嫌を直すためにと二人して外に出かけては、やれお菓子だやれ玩具だと買い与えていた。
母親の腕を組んでのお迎えに、由香里は父親の後ろに隠れてしまう。
「いいじゃないか、少しぐらいは」という父親の言い訳に対して、「甘やかしすぎです」と帰ってくるのが常だった。
しかし今は、口をきかないというしっぺ返しがある。
父親が怒らせたことではないのに、「悪かった、お父さんが」という謝る言葉が空しく響いている。

「どうした、由香里」
「先生が‥‥」
「先生がどうした?」
「お母さんがね、先生を独り占めしてるの。お父さん、お母さんのお手伝いをしてよ!」
父親に詰め寄った。
“やれやれ、寝ても覚めても先生か”とぼやきつつ、
「あゝ、分かった、分かったよ。お父さんが悪かった。
おーい、母さん。先生を解放してやってくれ。私が、手伝うよ」
と、奥の母親に声をかけた。
「はい、はい。じゃ、こちらに来てくださいな。
先生、ご苦労さまでした。少し、由香里の相手をしてやって頂けますかしら」

父親と入れ替わりに、彼が由香里の元にやってきた。仏頂面の由香里に対し、
「ごめん、ごめん。由香里ちゃんが部屋に入ったきりだったから、お母さんの手伝いをしてたんだ。どう? 片付いたかな、お部屋は」
と、声をかけた。
「うん! もう、イイヨ。さっ、お部屋に入って。
初めてのお客様なの、先生が。お母さんもお父さんも、立ち入り禁止の部屋なの」
と、嬉しそうに彼の手を取った。
「こりゃあ、大変だ。第一号なの? 僕が」
「そう。大人はね、入っちゃだめなの。ようこそ、由香里のネバーランドに」

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