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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十七)いま、おつきかねえ 

2015年10月06日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「あらあ。、いま、おつきかねえ」
家の中から、しわがれ声がした。姉さん被りのお婆さんが、のっそりと出て来た。

「お千代さん、こんにちわ。いつも、済みませんねえ。
これ、詰まらない物ですけど。それと、これ」

大きな紙袋をトランクから取り出しながら、母親は深々とお辞儀をした。
お婆さんは、満面に笑みを浮かべながら
「こちらこそ、ありがとさんですぞ。いい小遣い稼ぎになりますわの。
おぉお、嬢ちゃん。良く来たの。ほれ? 今年は、若いボーもご一緒かな? 
嬢ちゃんの、ボーイフレンドかいの」
と、少し腰を曲げてお婆さんが近付いてきた。

「おばあちゃん、こんにちわ! また、きたよ」
「どうも、初めまして。由香里ちゃんの、家庭教師をさせて頂いています」
慌てて彼も、深々とお辞儀をした。

「そうなのよ、お千代さん。高校受験が来年なの。大変よ、もう。
今までちっとも勉強をしてこなかったツケがいま回ってきたのよ」
「ほうかいの。そんなに大きくならしゃったかいの。うん? ご主人さまは、お休みかいの」
車の中を覗き込みながら、ハンカチを顔に被せて日差しを遮った父親に、お婆さんは大きく頷いた。

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