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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十七)大きな樫の木が見えてきた 

2015年10月05日 外部ブログ記事
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昼少し過ぎに、目的地入り口に着いた。
支流の川沿いにもう少し走るんですよ、と母親が告げた。
山の中腹にある、人口が百人程度の小さな村だった。
山の斜面に人家が点在している。
右手を見れば、深い切り立った崖の下を川が流れている。
ごつごつとした岩の間を縫うように流れている。

「普段は、ゆっくりと流れているんですよ。
雨のせいでしょうねえ、今日は。水量が増えているんで、速い流れになっていますね」

川の流れに気を取られていた彼に気付いたのか、母親が説明をしてくれた。
そもそもこの地に訪れるきっかけは、五年程前の山菜取りだと聞かされた。
この村の出身者に、誘われたらしい。

「私には、田舎というものがありませんの。主人も都会育ちなんです。
由香里が『お友達には田舎があるのに、由香里にはどうしてないの?』と、駄々をこねましてね。
それでまあ、古い家を買い取りましたの。
実にのどかですわ、ここは。時間がゆっくりなんです。
主人も『リフレッシュ出来る』と、申しまして。
主人の退職後には、移り住むつもりなんですよ」

くねくねと曲がる道路を暫く走ると、大きな樫の木が見えてきた。
「着いたあ!」
突然、由香里が大声で叫んだ。車の揺れで、どうやら起きたらしい。
「あそこ、あそこだよ。あの木が目印なの。分かりやすいでしょう、先生」
川を挟んだ山の斜面に、古ぼけた家が見える。
大きな樫の木は、その家の角にあった。

母親の運転する車は、狭い橋を少し行き過ぎて止まった。
運転席の窓を開けると、顔を出してバックし始めた。
大きめのセダンでは運転し辛いだろうと感じた彼は、「僕、降りますよ」と母親を制した。
川幅は、七、八メートルほどだろうか。

下を見下ろすと、支流のせいか先ほどの谷底のような深さではなかった。
しかし優に十メートルはある。
下を見続けてはめまいを起こしそうに感じる。
「済みませんねえ、助かりますわ。左側を見てくださいな」
寒風の中、彼はジャンパーの襟を立てて、車を誘導した。

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