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再会(教会編) 

2015年09月06日 ナビトモブログ記事
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ポーランドの古都、クラクフに着いたのは23時近かった。

翌日は、主人の親友スワヴェックと、夕食の約束をしている。

夜が明けてから、午前中にまず、その約束のレストランを探しがてら、街の中を歩いてみた。


主人は二度目だが、私は初めての街である。

ヨーロッパ好きの私は、名所旧跡巡りよりも、土地の人達が暮らしている風情を楽しむのが好きだ。

でもクラクフは、「世界でも有数の観光地」と説明されているだけあって、中心街には旅行者らしき人達が沢山集まっていた。

地図を片手に、主人と二人で周囲を見まわしていると、市内観光の電気自動車を運転するお兄さんに、早速声をかけられた。

余り乗り気ではない主人に、どんどん値下げして誘いかけてくる。

「色々な言語のガイドがあるよ」と、日本語バージョンの音声を流し始めたので、乗ってみることにした。


海外へ行って、日本語でガイドの説明を聞く経験は余り無いのだが、母国語の案内で瞬く間にクラクフ通になれた私は、結構楽しかった。



大体市内の輪郭がつかめた後は、市の中心にある「マーケット・スクエア」という名の、ヨーロッパ最大の広場に面したテラスで、ランチをとった。

イタリアン・レストランだった様で、パスタ・カルボナーラのコクのある味付けは絶妙だった。

ポーランドは、食通の国としても知られているのだ。


量が多いだろうと予想して、一人分を注文。主人とシェアをする。

ビールは、二人ともお代わりをしたけれど。

今年のヨーロッパは記録的な暑さだそうで、本場のワインを飲むつもりで出かけたのに、毎回まずビールを頼んでしまう。

ビールも勿論、飲みごたえはあるのだけれど。


その広場の一角に、クラクフで最も有名な、聖マリア教会がある。


主人が日曜日の朝は、10時から会議に出席するというので、秘かに私は、教会へ行ってオルガンを聴く計画を立てていたのだ。

クリスチャンでもない異邦人が、只オルガン聴きたさに日曜礼拝に参加する非礼を、主人がいつも危惧するので・・。


初めて、主人のお供でスイスへ行った時。

土曜の夜に着いたので、翌朝ホテルで良い響きのオルガンがある教会の場所を聞いて、礼拝にお邪魔した。

久々にヨーロッパの教会でオルガンが聴けて、私は喜こび勇んで教会を出てくると、出口で信者さんたちを見送っていた牧師さんに、「ハロー!」と声をかけられたのだった。

そこで無宗教の主人は、「妻が、オルガンを聴きたいというので、お邪魔しました」と、真実を述べたらしい。

そして帰りがけに、「こんな失礼なことは、もう止めようよ」と、釘を刺されたのだった。


だからこそ今回は、日曜日を有効に(?)使える絶好のチャンスだったのだ。


クラクフには、100位のカトリックの教会があるそうだ。まあ、大げさな表現だろうけど。

そして、日曜日の朝。

まっすぐ、聖マリア教会へ向かう。


横の入り口から入ったのが功を奏して、祭壇のすぐ近くの椅子に座った。

教会は大抵何処でも、祭壇に向かって椅子が並んでおり、その椅子の列が、一番後ろにある正面入口の前まで、細長く続く。

その入口の階上には、大きなパイプオルガンが備えられているのが一般的である。


祭壇に向かって座っていると、後方から聴こえてくるオルガンの荘厳な調べが響いてくる。

教会内の高い天井と、ステンドグラスを通して陽の光が差し込んでくる数々の窓と、沢山の彫刻で装飾された壁いっぱいに、オルガンの音色が鳴り響いて、いよいよミサが始まるのだ。


その日のオルガン演奏はさすがに素晴らしく、特に神父様の長いアカペラと、その後に続くオルガンのハーモニーが、ピタッと音程が合っていて、これは中々稀有な事だと思う。

それは、神父様もオルガン奏者も、共に絶対音感の持ち主である事を、証明しているのだから。


そして、キリスト教会でいかに音楽の担う役割が大きいかを感じながら、私は若かった頃によく訪れていた、ウィーンのシュテファン教会を思い出していた。


私が学んだ、ウィーン国立音楽大学には教会音楽科があり、付属の教会もあった。

カトリックの教会では、毎回聖餐を受ける人達の為に、オルガニストが即興で伴奏をつけるらしい。

その日によって人数が異なるから、オルガニストは人々の列の長さを見ながら、適宜曲の長さを調節するのだと、聞いた。


ローマ法王に選ばれる立場の枢機卿の人達は、更に絶対音感の持ち主でもあることが義務付けられているのだ、とも聞いた


そんなことに思いを馳せながら素晴らしいオルガンを聴いていると、いつしか私は、本場ヨーロッパのカトリック教会の中に、いくつもの懐かしさをおぼえていたのだった。

陸続きのヨーロッパには、後から定められた国境とは別次元の、宗教で結ばれた国家的存在があるらしい。



私にとってそのミサは、まさにカトリック教会との再会だった。



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再会できることは幸せですね

シシーマニアさん

彩々さん、コメントありがとうございました。

>日本の気候と違って音色、一味ふた味と
違うのでしょうね。

本当にそう思います。文化はそこの風土とともに育っていくのですね。

今回は、急に決めた旅行でしたので、思いがけない再会が沢山あって、楽しい時間が過ごせました。

又、アップしていきたいと思います。

2015/09/06 17:11:32

旅行記、アップします

シシーマニアさん

マリーさん、コメントありがとうございます。

マリーさんはそういえば、イタリア旅行を計画してらっしゃたのでしたね。
今年の夏は、記録的な暑さだったそうです。
只、あちらは湿度が低いので日陰に入れば救われますが、夜まで結構暑さが続いていました。

これから暫く、旅行記を書いていきます!

2015/09/06 17:06:14

それぞれの、旅スタイルですね

シシーマニアさん

パトラッシュ師匠、コメントありがとうございました。

宗教の問題は難しいですね。

>しかし、今日の見学者が、明日の信仰者に・・・
ということも、なくはなし。

実に同感なのです。
只私の場合の「今日」は、既に50年位の長さに及ぶので、家族としてはきっと、うんざりなのでしょう・・。

名所巡りは余り興味が無いのですが、教会の前は素通りできない、というのが私の旅行スタイルです。

2015/09/06 17:01:15

充実していました

シシーマニアさん

Reiさん、コメントありがとうございました。

ヨーロッパへ行くと、教会には圧倒されますね。
長い歴史や文化が感じられて、異国だ〜という気持ちも強まりますが・・。
オルガンが聴けたのは嬉しかったです。

2015/09/06 16:50:14

シニアナビを読んで、帰った実感を味わいました

シシーマニアさん

喜美さん、コメントありがとうございました。

お心遣い有難うございます。
クラクフではのんびり過ごしましたが、やはり疲れました。
こうして、ブログを書いたりコメントを読んでいると、元気が出ます。

2015/09/06 16:46:06

法要が終わったら、感想を聞かせてください。

シシーマニアさん

吾喰楽さん、コメントありがとうございました。

仏教と西洋音楽はちょっとかけ離れている気がしますが、日本の作曲家にとってはきっと可能性の広がる分野なのだとも、思います。
武満徹という作曲家などは、日本の民族性と西洋音楽を融合させた作品を多く残しています。ピアノという楽器は、音色も音程も決まっているので、融合が難しい印象を受けますが、人の声や弦楽器などは無理が無いと思います。

2015/09/06 16:41:45

圧倒されました。

シシーマニアさん

SOYKAZEさん、こんにちは。
早速コメントを戴きありがとうございました。
私の場合、教会と信仰で結ばれている訳ではないので(多分、まだ・・)いつもちょっとお邪魔する感じです。
絶対音感は、音楽の世界ではそれ程珍しいわけでもありませんが、ミサを執り行う上で本来は絶対音感を必要とする、という事は、やはり西洋音楽がキリスト教と共に発展してきた歴史を感じます。

2015/09/06 16:33:00

年を経て

彩々さん

また訪れることが出来る土地や
会える人は、再会の縁が回っている
からこそ、今回の旅も実現できたの
ですね。

会いたくても会えない人や、再訪出来ない場所って意外と多く、私もそうした
暮れ泥む想いを抱きながら、人生が
終わって行くのだろうと思ってます。

ヨーロッパの教会でオルガンが聴けて、
ヨカッタですね!
日本の気候と違って音色、一味ふた味と
違うのでしょうね。イイなぁ〜。

教会はオルガンの音に惹かれて
一休みするだけでも、誰も文句は
言わないはずですよ。
全ての人を受け入れる場所ですもの。

2015/09/06 12:54:19

お帰りなさい

さん

シシーマニアさんの強い西洋志向が満たされていい旅行になったのではないでしょうか。
イタリアに行った方も今年の夏はとても暑かったと言っていました。
その後もブログアップお願いしますね。

2015/09/06 12:16:05

宗教者の度量

パトラッシュさん

シシーマニアさんのご亭主さん、正直な方なのですね。
確かに、真剣な祈りの場を、信仰を持たぬ者が、
興味本位で覗くのは、内心、後ろめたいものが、あるかも知れませんが。

しかし、今日の見学者が、明日の信仰者に・・・
ということも、なくはなし。
神父さんだって、静かに音楽を聞くくらい、快く許して下さるのでは。
それが宗教者の度量だと思うのですが。

私も旅先で、古い教会があると、見学させてもらいます。
(国内ですが)
誰も居ない礼拝堂の椅子に、しばらく座っています。
信仰者の祈りが、堆積しているように思われる、その静謐な空気が好きなもので・・・

2015/09/06 11:23:37

いい旅

Reiさん

お帰りなさい。
いい旅でしたね。

以前、フランスで見た素敵なステンドグラスの教会を思い出しました。

素晴らしいオルガンの演奏を聴くことができてよかったですね。

2015/09/06 10:35:47

お帰りなさい

喜美さん

お疲れでしょう ゆっくり休んでください

2015/09/06 09:46:07

お帰りなさい

吾喰楽さん

おはようございます。

無事のお帰り、何よりです。

私は、神父さんにならなくて良かったです。
何せ、絶対音感には程遠い男です。
神父さんになっても、絶対に大成できません。

来月、菩提寺で大きな法要があります。
池辺晋一郎さん作曲の、オーケストラ公演もあります。
何と、読経とオーケストラのコラボが、あるんですよ。

2015/09/06 09:07:13

ミサの様子が

さん

シシーマニアさん、お帰りなさい。

ヨーロッパの教会と、ミサの様子が浮かんで来ました。
オルガンの音色まで聞こえて来そうです。
絶対音感の持ち主って、そんなに沢山いらっしゃるのですか?
私は今まで、極一部の方だとばかり思っていました。
それを見抜ける耳をお持ちなのですね。
素晴らしい!

日曜の一人の時間、いそいそと教会に向かうお姿を想像しました。
ラッキーでしたね♪

2015/09/06 09:00:23

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