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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六)きっかけは、不純なものでした 

2015年09月02日 外部ブログ記事
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「きっかけは、不純なものでした。
夜の女を口説き落とせるか? という、賭け事でした。
いえ、訂正します。そんなカッコイイものじゃない。
クラスメートに脅されたんです。一生女と縁のない生活を送ることになるぞ、と。
彼らにとっては、面白半分のゲーム感覚だったと思います。
イヤそれも違うな。
すみません、今になっても自分をかばっています。卑怯者です、ぼくは」
女の寝顔をのぞき込みながら、青年の語りは続いた。
その真摯さは、マスターと彼の背をピンと伸ばさせるに十分なことだった。

「純情な青年を演じて、彼女の気を惹いたんです。
他の男と逆の態度を取ったんです。
でも、サチ子、すごくいい娘で。人を疑うことを知らないんです。
よく騙されてました。僕も、その騙してた一人なんですが」

「うん、うん。君のことは半信半疑だったみたいだ、初めの内は。
でもポシェットなんか貰った頃から、君にぞっこんになったんだろうねえ。
だから他の客のからかいが、厭になったんだろう。
この子なりに、操を立ててたんだろう」
大きく頷きながら、マスターもまた、女の寝顔をのぞき込んだ。
二人に愛されているサチコは、軽い寝息を立てながら、髪を優しく撫でる二人の手をはねのける仕草をした。

「そうなんですか、やっぱり。
何となくそんな気がしてたんですが、確信が持てなくて。
でもあの夜、客が、嫌がるサチ子にしつこくからんでたんで、ついカーッとなって。
初めてです、喧嘩なんて。
もっとも、反対にボコボコにされましたけど」

目に浮かぶようだった。
女のために立ち向かう様は、きっと風車に剣を向けたドン・キホーテのようだったろうと、彼には思えた。

「でもねえ。あんたとこの子じゃ、住む世界が違いすぎるというか、ねえ。
泣きを見るのは、サチ子なんだよね」

「サチ子とは、絶対離れません。
住む世界云々は、キャリア官僚になるからだということですか? 
だったら、そっちを捨てます。サチ子を取ります、僕は。
サチ子との生活が正しいことか誤りなのかは、分かりません。
でも少なくとも、今の僕には正しいんです」

ためらうことなくサチ子との生活を取るという、青年。
牧子との生活に踏み切れない、彼。
子持ちのホステスとの生活を諦めた吉田。

“この差は、なんだ? 失うだろうものに対して、得られるだろうもの。
それに大きな価値を、見出せるかどうか、そういうことか”
青年の覚悟、とでも言うべき言葉に、彼は唯々聞き入るだけだった。

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