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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六) 酔っ払い 

2015年08月10日 外部ブログ記事
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彼の視線に気付いた酔っ払いは、傍らを通り抜けようとする彼の腕を掴んだ。
酒臭さをプンプン匂わせながら、「おいっ、兄ちゃん」と、話し掛けてきた。
「どうした、彼女にでも振られたか? それなら、酒を飲みな。
やけ酒は、男の特権だ。俺は、祝い酒だがね。
実はねえ、娘がね。へへ、お前さん知ってるか? 実に気立てのやさしい、娘でねえ。
我が娘ながら、自慢の娘なんだよ。
とんびが鷹を産むってのは、こういう事なんだなあ」

男の声が、泣き声に変わった。
「その娘がさあ。その娘が、明日、嫁に行くんだ。
嬉しいじゃあ、ないか。旦那さんてのがさ、エリート社員なんだよ。
幹部候補なんだって、さあ。
たくさんのガールフレンドの中から、俺の娘を選んでくれたんだよ。
嬉しいじゃあないか。
なあ、兄ちゃん。酒を飲みな。
酒を飲んで、ぷああ、と騒いでさ」

煩わしく感じていた彼だったが、その酔っ払いの涙を見て、彼も又もらい泣きをしてしまった。
どうも、今日の彼は涙もろかった。
「良かったじゃないですか。お父さん、早く帰ってあげなきゃだめですよ。きっと、娘さんが待ってますよ」
「なにい! 知った風な口を、利くな! 
帰りたくても、帰れないんだよ。
明日、嫁に行っちまうんだぞ。明日からは、娘は居ないんだぞ。
俺が帰ったら、……、明日が来たら、娘が居なくなるんだよお」

その場にうずくまって、その酔っ払いは泣き崩れてしまった。
人目も憚らずに、おいおいと泣き始めた。
ようやく、嬉し泣きではないことに気付いた彼だった。
花嫁の父親の悲哀を、初めて知った彼だった。

“お爺さまは、どんな気持ちだったんだろう。
多額の金に目が眩んで嫁に出したと、聞いたけれど。
娘を売った! なんて陰口を叩かれた、と聞かされたけど”

突然、茂作の言葉が聞こえた。
「商売女に、しておけ!」
何故今、その言葉が耳に響いたのか。
彼には分からなかった。しかしその言葉の中に、茂作の愛を感じた。

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