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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六)そして、一ヶ月。 

2015年08月08日 外部ブログ記事
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牧子からの手紙は、確かにショックではあった。
しかし不思議なことに、冷静な気持ちで読んでいた。
予感めいたものを感じてはいたのだが、努めて考えないようにしていたのだ。

悲恋に嘆く己を、楽しむような趣きがある。そんな己に酔っていた。
貴子との再会が、それを導き出したかもしれない。
思えば、異性関係に関して挫折を知らない彼だった。
気が付けば、誰かが傍らに居てくれた。
嬉しい時には共に喜び、悲しい時には泣いてくれた。
憤怒の思いに駆られた時には、慰めてもくれた。

いつの時にも、どこの場所にも、居た。
故郷には、敬愛して止まぬ母が。
性の指南には、ユミが。
バイト先では、貴子が。
大学では、耀子が。
私生活では、恋と言うには余りに激しかった牧子が。
そしてそして、初恋と呼ぶべき、麗子が。

牧子に指摘された、母の影。
母の庇護の元に、暮らした幼年時代。
母の後ろを、歩き続けた幼年時代。
母の喜ぶ顔見たさに、勉学に勤しんだ少年時代。

大学進学を口実に、茂作の呪縛から逃れようと故郷を飛び出した。
今にして思えば、息苦しさを与え続けていたのは、誰あろう母だったのかもしれない。

部屋の中に、雨が降っている。
全ての物が、歪んでいる。
力なく座り込んだ。
何をする気にもなれない。
唯々、涙が溢れ続けた。
体中の水気が全て失われるかと思える程に、泣き続けた。
読み終えて後、牧子が指摘した母を思った時、涙が溢れてきた。
淋しいからではない、悲しいからでもない。
隠されていた自己が突然表に現れて、我が物顔に彼の心の中を走り回った。

”マザコンだ、マザコンだ!”
”違う! 違う! 断じて、違う!”

気が付くと、畳に突っ伏して眠っていた。
部屋が寒々としている。
外は闇に包まれていた。
「しっかりしろ、武士! 人生の終わりでも、あるまいし」
声に出して鼓舞しながら、お腹に力を入れて勢いよく飛び起きた。
しかし気持ちの萎えは、消えなかった。
灯りを点けても、気は晴れない。
とに角、部屋を出ることにした。

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