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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十六) 逢いに行って、いいですか? 

2015年08月06日 外部ブログ記事
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アパートに帰り着いた彼は、その冷え冷えとした部屋にうんざりした。
早速ストーブに火を入れたものの、中々に暖まらない。
母親手作りの褞袍を着込み、部屋が次第に暖まり始めても、心の冷えは収まらなかった。

「牧子さん、どうしてるかな」
声に出した途端、訳もなく涙が溢れてきた。
「逢いたい、逢いたいよお!」
思わず、大きく叫んでしまった。
「よし! 手紙を書こう」
思い立ったが吉日とばかりに、レポート用紙にペンを走らせた。

=牧子さんへ
逢いに行って、いいですか?

「うん、これでいい。余計な言葉は、要らない。
恋々とした言葉を並べ立てるより、余っ程良い。
Simple is best! だ」
一人、悦に入る彼だった。
もう、茂作の夢など忘れてしまったかの如くに、嬉々とした思いで封をした。

一日千秋の思いで待ち続けた手紙は、中々届かなかった。
といっても未だ一週間なのだが、彼にはひと月にも感じられた。
平生は、週に一回覗けば良い方の彼なのに、毎日の日課としてポストを覗きこんだ。
そして、大きく嘆息してしまう。

“どうしたんだろう、一体。届くまでに、二日。返事を書くのに、一日。
翌日出したとしても、五日後には届くはずなのに。
ひょっとして、行方不明になってないのか? 
届いてないんじゃないか、ひょっとして。
郵便局に調べてもらおうか。
いや…まさか、牧子さんまで倒れたんじゃ”
あれこれ考えてしまうが、とにも角にも待つしかない。

「心、此処にあらず、だな」
吉田のそんなからかいの声に、苦笑いを見せるだけの彼だった。
家庭教師先でも、時として頓珍漢な受け答えをしてしまう。

“あゝ、もう。手紙なんてまどろっこしい事をせずに。『来ました、よ〜ん!』で、済む事じゃないか”
今更ながらに、後悔してしまう。
わざわざお伺いを立てるような事柄ではないのだが。
生来の弱気の虫が、出てしまった。
裏を返せば、嫌われたくないという気持ちなのだ。
有り体に言えば、惚れ切っているのだ。
我を通せないのだ。
麗子流に言えば、演技が出来ないのだ。

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