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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十五) 懐かしい声だった 

2015年07月26日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「はい、山田です。」
懐かしい声だった。甲高く、言葉一つ一つが明快に区切られて、時として脳の神経をチクリと刺す声だった。

「貴子さん、ですか? 僕、、」
「たけしさん? たけしさんね。久しぶり! 雪枝から連絡があってね、待ってたのよ。嬉しい! 
ねっ、今どこ? バス停を降りてすぐの、たばこ屋さん? うん、分かった。すぐに行くから、待ってて」

貴子の弾んだ声を聞いた彼は、体がカッと熱くなるのを感じた。
“来て良かった。いいさ、あのことは聞かずにおこう”
受話器を置くと、手の平に汗をかいていた。鼓動の高鳴りが、激しく耳に響いている。

「貴子さんって言うと、あの山田さんちの、貴子ちゃんかい?」
人懐っこそうなお婆さんが、彼に微笑みかけてきた。
「えっ? はい、そうですが」

「そうかい、そうかい。あの娘は、良い子だよ。
こんなお婆の話し相手になってくれるような、心根の優しい娘だよ。
大事にしてあげてな」
「はい、わかりました」
別れた女性なんですと言える筈もなく、苦笑いをしながら答えた。

「ごめんねえ。お待たせえ! あっ、お婆ちゃん、こんにちわ。
どう、膝がまた痛むんじゃない? 雨が降りそうだからさ」
「あゝ、ありがとうねえ。少し痛むけどねえ、今夜先生ん家に行くつもりさあ。お灸を据えてもらうわさあ」
祖母をいたわる孫娘のように話しかける貴子は、彼の知らない貴子の一面を見た思いがした。

“こんな素敵な女性を、どうして僕は‥‥”
後悔の念が、彼を襲った。
屈託のない笑顔を見ると、あの噂はやはり嘘だろうと、思えてしまう。
「お婆ちゃん、またね。たけしさん、じゃあ行こうか」

連れだって歩きながら、貴子は含み笑いをもらした。
「うふふ。着てくれてるんだ、このジャンパー。良く似合ってるよ。
これなら、人混みの中でもすぐに見つけられるね。
でも、どういう風の吹き回し? ひょっとして、誰かにふられたのかな? 
あっ、ごめんね。たけしさんが、ふられるわけないか。
でも、嬉しい。ねっ、腕組んでもいい? 
うふふ、昔に戻ったみたいで幸せだわ」

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