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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜(十三) 訃報 

2015年06月07日 外部ブログ記事
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田舎から戻った彼を待っていたのは、信じられない訃報だった。
耀子とのぶこが自殺した、というのだ。
耀子のマンションで
二人が睡眠薬自殺を図った、と吉田に聞かされた。
俄には信じられない彼だったが、今日がお別れ会だと聞かされては信じざるを得なかった。

― 耀子とのぶこ、無理心中だって。
― レズビアンだったって、ホント?

― 浅田助教授とドロドロだった、って聞いたわよ。
― 片思いだって、聞いたわ。

― のぶこ、道連れなの?
― のぶこもね、不倫の清算ですってえ。

― 耀子ってさぁ、発展家だったのよねえ。
― うん、私はそう聞いた。両手だってえ。

様々な噂が飛び交った。
「まったく、無責任な噂さ。まっ、中には的を得ているものもあるだろうけれど、ここで話すことじゃないだろうに。
ご遺族が見えてるってのに」
吉田の憤慨に対して、彼は「うん。そうだよな、うん」と、相づちを打ち続けた。
実のところ、人の会話など耳に入っていなかった。

“そうか。あの晩、僕が。怒って帰ったりしたから、それで孤独感に苛まれて‥‥”
“ぼくは‥‥。いったいなにをしているんだ。”
真理子に続いて耀子にのぶこと、立て続けに襲う災禍で彼の心中を後悔の念が渦巻いていた>
救いを求めたくなった。全てを吐露しなければ、ぶちまけなれければ、彼自身が壊れそうだった。

「どうだ、出ようか?俺たち二人で、偲ぶ会をやろうや」
「そうだな、うん、そうしょうか」
焼香を済ませた二人は、憔悴しきった両親に対し、深々と頭を下げて会場を後にした。

「どうする? 居酒屋にでも、行くか?」
「いや。僕のアパートにしよう。他人には、聞かれたくないし」
彼の提案に、一も二もなく吉田も頷いた。

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