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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜(十三) 見ちゃったもん 

2015年05月28日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



二階の彼の部屋は、塵一つなく掃除が行き届いていた。
少し蒸し暑さが残る部屋だったが、窓を開けることはためらわれた。
母親に会話を聞かれたくないという思いが、彼に強くあった。
ベッドに腰掛けた彼は、入り口で躊躇している早苗に
「入れよ。お母さんには、聞かれたくないんだ」
と、冷たく言い放った。

「うん。お兄ちゃん、怒ってるの? あの手紙は、ホントのことだよ。早苗、嘘付いてないよ。見たんだもん。それに、」
「何だよ、途中で止めるなよ。それに、何だよ」
「おじいさんのこと、いじめてるの。いつも、怒ってばかりなの」
下を向いたまま、早苗は小声で彼に訴えた。

「四六時中一緒に居たら、少しは怒るさ。痴呆老人特有の、妄想なんだよ。
泥棒呼ばわりするのは、典型的な痴呆の症状なんだよ。
もう少し進行すると、変わるんだ。誰が本当の味方なのか、分かってくるんだ。
確かに、優しく接するのが一番なんだけども。
お母さんにしても、もう少ししたら落ち着くさ」
早苗にというよりは、己に言い聞かせる彼だった。
「そこじゃ、遠いだろうが。こっちに、来いって。言っただろう、お母さんには聞かれたくないって」

棘のある彼の言葉に、身を竦ませる早苗だった。
彼は、入り口で立ち竦む早苗に、
「いいよ。もう、帰れ。早苗の思い過ごしだろうが」
と、更なる言葉を投げつけた。
早苗は意を決したように、彼の前に立った。
「思い過ごしなんかじゃないもん。
おばさんが男の人とキスしてるところ、見ちゃったもん。それに、おじいさんを叩くところも」

彼の平手が、早苗の頬に飛んだ。
「嘘を言うな! お母さんがそんなこと、するわけないじゃないか!」
突然の平手打ちに、早苗は何が起きたのか、瞬時には理解できなかった。
頬の痛みが遅れてやってきた時、みるみる早苗の目から涙が溢れた。
痛みからの涙ではない。
彼が早苗の言葉を信じないが故の、涙だった。
「悪かった、スマン。早苗が悪いんだぞ、とんでもないことを言うからだぞ」
ベッドから立ち上がった彼は、早苗の肩に手を置いて謝った。

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