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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜(十三) お爺さまの虚言なんだ 

2015年05月26日 外部ブログ記事
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「おおっ、初江さん。初江さん、初江さん」
廊下を四つん這いになりながら、茂作が早苗に声をかけてきた。
早苗は茂作の元に駆け寄ると、
「お爺ちゃん。私は、早苗だよ。初江は、お母さんじゃないの」
と、茂作の背中に手をかけた。

「ええっと。そこにお見えになるのは、どなたですかな? 
ああ、この方のご主人ですかな? 
ご主人、この方に言って聞かせてくださいな。
何度お願いしても、私のお金を返してくださらないのですよ。
後生ですから、返してくださいな」

茂作の娘である筈の小夜子を指さしながら、彼に懇願してきた。
茂作の目はどんよりとして、生気がまるで感じられなかった。
しかし、小夜子に対する茂作の視線には、強い光が宿っていた。
「お爺さん。又、そんなことを言って。お金なんか、取っていませんよ。
それに、武士でしょうが。忘れたの、孫の顔すら忘れたの!」
母親は、茂作をキッ! と睨み付けた。

「呆けが、進行しちゃってね。あることないこと、言いふらしてるの」
彼を振り返りると、いつもの柔和な表情に変わっていた。
「痴呆の症状が、激しくなったんだね。
教授に聞いたよ。初期段階では、身近で世話をする人間に対し、敵意をむき出しにするって。
先ず、泥棒呼ばわりするって」

「そうなのよ、実際。早苗ちゃんのこと、初江さんだと思っているらしくてねえ。
私の悪口を、散々言ってるらしいわ。
ごめんなさいねえ、早苗ちゃん。
あなたにも、迷惑ばかりかけて。呆け老人の被害妄想なの。困ったものだわ」

一瞬ではあったが、早苗を見る目に敵意のようなものを見たような気がした。
”そうかあ、そうなんだ。お爺さまの虚言なんだ。
それを真に受けて、早苗の奴が、あんな手紙を。
そうなんだ、そうなんだ”

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