読書日記

『永遠の森 博物館惑星』 <旧>読書日記1534 

2023年12月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


菅浩江『永遠の森 博物館惑星』早川書房(図書館)

この本は今から20年前の2001年7月に出版されている。1993年から1998年にかけて、早川書房「SFマガジン」に単発で掲載されていた作品群に書き下ろし(「この子はだあれ」)を加えて、単行本として刊行された作品である。

また、この本は第54回日本推理作家協会賞の長編および連作短編集部門、更に第32回星雲賞日本長編部門を受賞。加えて、早川書房刊の「SFが読みたい!2001年版」で国内編第1位を受賞している。

と言う様なことをまったく知らずにいたのだが、書評でおよそ20年ぶりに続編が出たという。なかなか評判が良さそうなので、当初は買うつもりでいたが現物が(文庫でも)見つからず、試しに図書館の本を検索したらあったので予約して借り出した・・一読して驚愕。こんな傑作を知らなかったとは・・思えば、20年前はあまりSFを読まず、せいぜい年に数冊程度しか読んでいなかった。

さて、この短篇集の構成というか背景というかは以下の通り。
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館―“アフロディーテ”。そこには、全世界のありとあらゆる美術品、動植物が収められている。音楽・舞台・文芸担当の“ミューズ”、絵画・工芸担当の“アテナ”、そして、動・植物担当の“デメテル”―女神の名を冠した各専門部署では、データベース・コンピュータに頭脳を直接接続させた学芸員たちが、収蔵品の分析鑑定・分類保存をとおして、“美”の追究に勤しんでいた。そんな部門間の調停をつかさどるのが、総合管轄部署の“アポロン”。日々搬入されてくる物品にからむ、さまざまな問題に対処するなかで、学芸員の田代孝弘は、芸術にかかわる人びとの想いに触れていく。

で、全部で9篇。
「天上の調べ聞きうる者」「この子はだあれ」「夏衣(ナツギヌ)の雪」「享(ウ)ける形の手」「抱擁」「永遠の森」「嘘つきな人魚」「きらきら星」「ラヴ・ソング」

天上の調べ聞きうる者:特定の人には見ると歌が聴こえるという絵画の調査
この子はだあれ:老夫婦が求めるのは古い人形の「名前」。そこから明らかになる過去の誘拐事件。
夏衣の雪:邦楽の家元襲名公演の準備とそれに使われる笛・着物の調査
享ける形の手:かつて一世風靡したダンサーの引退公演。ありのままの自分を踊る。
抱擁:美の価値を真に受けとめる方法を模索する引退した旧バージョンの直接接続者の話
永遠の森:植物の成長で時間を示すバイオクロック。その模倣品調査と作者二人の間にある愛。
嘘つきな人魚:少年が実物を見たいと切望する、消えた人魚像と少年の遭難を救うサイボーグ化された現役の人魚制作者。
きらきら星:小惑星イダルゴにて採取された彩色片の調査。黄金律を追求する話
ラヴ・ソング:ベーゼンドルファー・インペリアルグランド(ピアノのブランド)にまつわるピアニストと孝弘の妻である美和子が織りなす愛のエピソード。
(2021年7月6日読了)



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