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敏洋’s 昭和の恋物語り

愛の横顔 〜100万本のバラ〜 (十九) 

2023年11月29日 外部ブログ記事
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 圧巻だったのは、ステージ最後の全員でのおどりだった。全員がうしろに控えるなか、栄子が軽快におどる。手拍子が高まるにつれて、栄子がうしろに下がり全員がそろう。大きな動きをしながらも互いを気遣うおどりは、壮観なものだった。会場のほとんどが総立ちとなり、手拍子で応える。「オーレ!」と会長がハレオを入れて、場を盛り上げた。一時間の予定を超えてのショーは興奮のるつぼと化して、女性たちの間から「あたしもやってみたい!」という声が飛びかった。
 互いをたたえあう声の中、控え室で帰り支度をしている栄子の元に会長が現れたことで、控え室が大騒ぎとなった。そこかしこで、パトロンの話ねとささやかれた。「よろしいかな、皆さん。今日はほんとにありがとう。みんな大喜びでした。ステージ上での素人相手のレッスン、実に良かった。入会希望者がたくさん居ますよ。ありがとう」 少し丸まった背中が衰えを感じさせはするが、その眼光はするどいものだった。その威圧感にたじろぐ主宰の手を取り、なんども謝意を述べた。
 にこやかな表情で「ところでと、あなた、あなた。お名前は…松尾栄子さんだったね」と、うしろに立つ栄子に声を掛けた。栄子の手を両手で包みこみながら「あなた…スペイン村のフィエスタ・デ・フラメンコで優勝されましたな」と、思いもかけぬことを言った。「いえ、あたしは…」栄子のことばをさえぎって「まあまあ、そんなことを…」否定も肯定もせずに、主宰が口をはさんだ。その目は“恥をかかせちゃダメ”と告げていた。 もうろくしているの? という疑問をいだいた栄子だが、それでも良いと思った。なんでもいいから「パトロンとして後援するよ」といって欲しいのだ。
「わたしがもう少し若ければ、もう十才も若ければパトロンになってあげられたのに。じつに、残念だよ」 期待が大きかっただけに、栄子の落胆はおおきい。しかしいまここで、それを知られてはいけない。栄子のプライドが許さない。「そこでだ、良い話がある。この男性を紹介したい。ぼくの知己の息子さんでね、松下くんです。年齢は、四十だったかな? 人物はぼくが保証します。彼は大層な資産家でね、彼ならあなたの後援者になれる。松下くん、自己紹介なさい」
 うしろに控えていた男が前にでた。色白の長身で、ほっそりとした体型をしている。目つきの鋭い端正な顔つきだった。「松下国雄です。あなたのステージを見せてもらい、感動しました。元来、芸術にはとんと縁のない無粋者でして。会長にお誘いを受けたときも、じつはお断りしようと思ったのです。ですが無理強いをされましてね、断ったらお前との関係もこれまでだ! なんて脅しのことばまでかけられました。いやいや、よーく分かりました、会長の真意が。というところで、いかがですか。このあとご予定がなければ食事でも」

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