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読書日記
『田舎のポルシェ』 読書日記293
2023年11月21日
テーマ:読書日記
篠田節子『田舎のポルシェ』文春文庫
私が書評を通じてこの本のことを知ったのは2年前(2021年)の夏だった。図書館で検索したら、予約が一杯なので空いてくるのを待つことにして放置した。その本が今年の10月に文庫化されて書店に並んだ。図書館ではまだすぐには借りられない状況であったこともあり、購入して読んだという次第である。
文庫の裏表紙にある内容案内を写すと
実家の米を引き取るため、助っ人の車で岐阜から東京へ向かうことになった翠(ミドリ)。だが待ち合わせ場所に現れたのは経トラに載った強面ヤンキー!さらには大型台風が迫り−−−。往復1000キロ、はらんだら家の強行軍を描いた表題作ほか、それぞれ秘めた思いを抱いた人々の哀歓を旅のスリルに乗せて届ける珠玉の作品集。解説・細貝さやか
となり、「田舎のポルシェ」「ボルボ」「ロケバスアリア」の3作が収められている。
amazonの紹介だと表題作はともかく、あとの2編については
「ボルボ」…不本意な形で大企業勤務の肩書を失った二人の男性が意気投合、廃車寸前のボルボで北海道へ旅行することになったが――。
「ロケバスアリア」…「憧れの歌手が歌った会場に立ちたい」。女性の願いを叶えるため、コロナで一変した日本をロケバスが走る。
となっている。
ところで、上の表題作の内容案内でちょっと不思議なことを感じないだろうか?普通に考えれば東京から岐阜に車は向かうのではないだろうか。しかし、向きは逆なのである。そうしたことの説明を兼ねて翠の過去と現状が語られていく。そして、強面ヤンキーに対する警戒感が次第にほぐれていく・・巧い、と思う。「ボルボ」では走る理由は即物的な事では無くそれこそ秘めたる思いであるが、「ロケバスアリア」は走る理由もなぜロケバスなのかもうまく説明され納得できるだけではなく、ホロッとさせられもする。
著者の他の作品にどんなものがあるかと思えば、著者は日本の小説家、ホラー作家、SF作家、推理作家。となっていてどうしようかと考えている。直木賞を得た『女たちのジハード』も著者にしては異色作らしい。また著者に出会える縁があることを願う。
(2023年10月31日読了)
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