読書日記

『寝乱れ姿』 <旧>読書日記1517 

2023年11月22日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


野口卓『寝乱れ姿』集英社文庫

めおと相談屋奮闘記の4冊目。「さかとら」「信吾二人(ニニン)」「幸せの順番」「寝乱れ姿」「女先生冷汗」の5篇を収める。

「さかとら」は『次から次へと』に収められた「女房喰い顛末」につながる話で婚姻するにあたっての持参金を巻き上げようとする悪巧みの新たな技法を信吾が「逆虎」と名乗る男に教えてしまったのではないかと悩む話。

「信吾二人(ニニン)」は信吾の武道の師であり名付け親でもある厳哲和尚の過去に触れ、なぜ信吾という承認らしからぬ名前を付けたかという謎に答える。

「幸せの順番」は将棋会所の客である徳次が何かを悩んでいる姿を見て信吾が積極的に関わろうとする。例の通り信吾自身が有効な策を出した訳では無いが信吾と話したことで徳次の迷いは晴れ、それが奇跡を生み出す。

「寝乱れ姿」は艶話。時々、この作者はこういう話をはさむ。解説者によればこれは作者の緩急を心得た手腕であると言うのであるが、私はこうした「わじるし」や「艶話」を面白いとは思わない。今回は「驚くほど生々しかった。だが、それをそのまま書き写すことは、さすがに憚られる。故に読者に想像していただくしかない」と矛先をそらせて逃げている。

「女先生冷汗」は波乃が初めて一人で受けた相談。男が鏡の中から女に話しかけるという怪異譚で、波乃は冷や汗をかきながらも相談者の笑顔を取り戻す。

このシリーズは時代物の姿を借りたファンタジーであって理屈を追い求めるものでは無く、ひとときを楽しむにはちょうど良いものである。
(2021年6月2日読了)



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