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敏洋’s 昭和の恋物語り

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(十四) 

2023年11月12日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 朝食もそこそこに、約束の十時より一時間もはやく会社の駐車場についた。毎日つかっているからと、週末にはかならず洗車をしワックスがけもしている車から「はやいね」という声が彼に聞こえてきた。にが笑いを見せる彼で「二度ぬりすると色が沈みこんできれいですよ」とガソリンスタンドでアドバイスされたことを思いだし、もう一度ワックスがけをすることにした。
その後エンジンオイルの確認をして、車内の掃除も念入りにした。すこし離れた場所からあらためて車をながめると、たしかにグレーの色が沈みこんだ状態になっている。思わず「渋いぜ」と口にする彼だった。空はあいかわらず、快晴だ。
 十時すこし前を、最新型の腕時計が指している。彼の自慢の腕時計だ。どうせ買うならやはり良いものをと、セイコー社の高級品を購入した。「どうだい」と見せびらかす彼にたいして、眼鏡店で買ったことに対し「どうしてそんなところで」と、会社で散々にバカにされた。(俺だって○兵が安いということは知っている。だけど……)
「俺が安く買うということで、小売りに問屋そしてメーカーのすべてでもうけを圧迫することになる。そしてそのことで社会全体のもうけが少なくなり、巡りめぐってうちの会社の利益低下をまねく。そしてそれは、俺の給料に影響してくる。だから○兵はやめた」と、岩田に言いはった。しづのところは、その眼鏡店に美人の店員がいると噂に聞いたことからなのだが。しかし、噂はやはりうわさだ。それとも、俺の美人観が他人とちがうのか……?
「お待たせえ!」という声に、体中を緊張感がはしった。すぐにもふり返りたい思いをおさえて、「思ったよりはやかったね」と、ゆっくりと体をまわした。貴子がひとりだけで手をふっている。話がちがうじゃないかと落胆のいろをみせる彼にたいして「心配しないの、真理子ちゃんはお買い物中。お弁当はつくったけど、デザートの果物が欲しいんですって。あそこのスーパーで待っているはずよ、心配ないって」と、笑いとばしながら「ハイハイ、いくよ!」と車に乗り込んだ。

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