花かるた

鳥 

2023年10月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

鳥取砂丘、あの大きい砂山の天辺から
ある日海を眺めれば、浜辺には地元民とおぼしき
若い夫婦が、2匹の小型犬と波打ち際で遊んでいた。

私は、小一時間も天辺にドッカリ座り込んで
心地よい海風を浴びながら、それを見ていた。
いつまで見ていても良い、何と平和で幸せな光景か。

だがそこに、不意に大きな茶ブチの鳥が現れた。
鳥は、浜で遊ぶ小さな犬に目をつけた様だ。
羽ばたくことなく、風のように瞬速で飛翔し
気流の谷間でホバリングしながら、犬を見下ろしていた。

どうやらこれはトンビ(鳶)という鳥らしい。
海辺にいる飼い主も犬も、足元の波に夢中で
危険が迫っている事には、まだ気づいていない。

時いたり満を持して、トンビが高速で急降下した。
殺気に気がついたか犬は、ハッ!と跳びすさる。
一歩遅れて傍らの男性は、やっとこのハンターを
認識したようだった。

狩が始まった。自由自在に海風に乗り執拗に獲物を
狙う。羽を広げた姿は、小犬の2倍はあるだろう。
犬と飼い主が離れるように、グングン追い立てている。

そして再度、斜めから一直線に来たー!
鳥の脚が犬の背中を掠めていく。

早く、早く、犬を抱きかかえなさいよバカ!と
私はジリジリしたが、それとは別に流れるような滑空に
魅せられて、ギリギリの望遠でその姿を追い続けた。

ここで、もう1匹を守っていた女性が、先に逃げ出した。
それを見て、夫君も続く。

彼女は、傍らの犬をタオルで包み隠し、抱きかかえて
走る。砂山を登る。砂はサラサラと崩れて、焦る程に
脚を取られてあえぐ!。

何故かしらん、彼女は山の天辺に座る私をめがけて
命からがら、這い上がってきた。
かくして高みに座した、私の睨みが効いて??
否、大勢の人間が居たせいかもしれない。

トンビは唐突に執着を捨て、スーっと彼方へ去った。
私は恐怖と興奮が冷めやらぬ2人と2匹を見た。

犬たちは、タオルから抜け出して、急いで私に駆け寄り
怖かったのよ!クーンと、身を寄せて来た。女性は
「あぁ〜!怖かったー!」と、力付きて私の横に伸びた。

見上げれば鳶の勇姿は、影も残さずかき消えて
平和が戻った青空に、午後便のANAが、白い機体を
煌めかせながら、重たげに彼方へ、飛んで行った。



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