花かるた

東北の温泉宿で 

2024年02月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

新幹線に乗り1時間半、それからバスに乗継ぎ
さらに1時間程も揺られて訪れたのは東北の山奥の温泉宿。


東北はまだ冬だった。
下りたった地は、そこここが立ち枯れた装いのまま
シンと静まりかえり、虫の音どころが鳥の声ひとつ
聞こえてこない。

裏山の斜面や窪地、道を覆う枯草の上に居残る根雪の上を
わたる風は冷え冷え、さやさやと音もなく
宿の前を流れ下る川水に、吸い込まれて溶けていく。

ゆるゆると流れる川には、どこからか流れ着いた大石が鎮座し
小石や砂泥が溜まって、中州をこしらえている。

そう言えば昔人、鴨長明が行く川の流れは・・・・と
人の生き越しを謳ったが、今同じ川を見た私はどうした事か
大きな桃か一寸法師がこの川を流れ下って来るような気がした。

それ程、長閑で平和な静けさだ。一体私が今ここにいることも
うたかたの泡なのだろうか、柄にもなくしんみりとしていたら
藪の陰から、鴨が元気に飛び出して来た。
いち、に、さん・・・、6羽もいる。

この里山にも、もうすぐに春が来る気配。
寒さの中にも、土手に植えられたありきたりの桜並木の
そこここで、硬く閉じた蕾が少しずつ膨らんでいた。




今年の初湯は
東北地方の、うら寂れた温泉宿に籠ると決めていた。
お・も・て・な・し・などとは、無縁のような古の宿で
客はほったらかしの、大きな古宿である。
そこで三泊四日を、勝手気ままに過ごした。

朝、昼、夜、寝る前に、日に何回も露天風呂へ。
寝て、起きて、また露天風呂へと、湯治の真似事を
してみたが、所詮カラスの行水であるから
日帰りで通う、茹った地元のお婆さんたちのようには
私の身体は、それほど温まらない。

さすがの3日目には、頑張り過ぎて、少し飽きもして
外に出た。こうして土手道を歩いてみたのだが
なにしろ収める画が無い。どこにカメラのレンズを向けても
裸木と枯れ野と朽ちた廃屋で、一面ボロボロの田舎風景。

ところが、そこで私の田舎感度計が良い塩梅に反応する。

例えば足下の土手道は、腐葉土でフカフカだ。
例えば暖かい陽ざしと冷たい空気。
例えば川で遊ぶ鴨たちの無邪気な姿
そして、枯草と朽ちた草むらからは、沢山の小さな小さな
青い花、これ全てが一人占め!

寒さの中に春を感じるこの時期が、私には最も心地良く
気分が上がる。そう感じるのは、生まれ月だから、身体が
季節を記憶しているのかもしれない。


*城は今も残る石垣が見事な、国指定史跡の小峰城跡



拍手する


この記事はコメントを受け付けておりません

PR





上部へ