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敏洋’s 昭和の恋物語り

愛の横顔 〜100万本のバラ〜  (六) 

2023年08月31日 外部ブログ記事
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 激しい雷雨のなか、東京駅のとけいは夜の九時をさしている。ひさしぶりの外出をした松下だった。電車からの乗降客と雨宿りのためにとどまった乗客たちで、構内は大混雑だ。あきらめて雨のなかに走り出す若者たちが増えるなか、どこといって行くあてをもたぬ松下だった。外出といえば聞こえはいいが、実のところは自宅マンションから逃げ出してきた。一年近くの同居生活を送っているユカリからの逃避だ。
 今日も朝からパソコンにむかっていた。となりの居間には、これみよがしに大音量で映画に見いるユカリが居る。「あーあ、こんなことならお店を辞めるんじゃなかったわ」。松下に向かって大声で話しかける。しかし松下からはなんの反応もない。腹を立てたユカリが、大きく足を踏みならしながら部屋にはいった。チラリとユカリを一瞥した松下だが、なんのことばもなくモニターに目を戻した。
 ユカリはその場に立って、じっと松下をにらみ付ける。しばらくの後「どういうつもりなの、あなた!」と、ユカリが口を開いた。ふりむくこともなく「なにがだ」と松下が答えた。見るみるユカリの顔が紅潮し「人の目を見て話しなさいよ。失礼でしょ、そんなのって」と、きつい口調でなじった。「大事な場面なんだよ、いま。話ならあとにしてくれ!」 思わず怒鳴ってしまった。そしてうるさそうに、手でおいはらう仕草をみせた。
「もう、頭にきた!」 そう叫ぶやいなや、パソコンのコードをコンセントから引きぬいた。画面の消えたモニターを見つめながら「どういうつもりだ。いま、どれだけの損失を出したか分かるか。お前の年収分ぐらい、吹っ飛んだかもしれないんだぞ」と、怒気のはらんだ、しかししずかな声でいった。「知らないわよ、そんなこと。あなたがわるいんだから。ひとを小バカにするあなたが……」 口を尖らせるユカリに、松下の怒りが爆発した。左頬に信じられない痛みを感じたユカリ、手に届く物を手当たり次第に投げ出した。
「許せない、許せない!」 ヒステリックに泣きさけぶユカリに手を焼いた松下、ほうほうの体で部屋をにげだした。ひとり取り残されたユカリ、その場にしゃがみ込んでしまった。“どこを間違えたの? 玉の輿に乗ったはずなのに……”。自問自答をくりかえすが、答えはでない。

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