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敏洋’s 昭和の恋物語り

[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十) 

2023年08月26日 外部ブログ記事
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(誕生 三)
 しかしムサシはまるで動じない。不気味なほどに落ち着きはらっている。梅軒には初めての経験だ。梅軒の手には鎌がある。ムサシに近付いたところで、いつものように鎌を払えば良い。ムサシの腕なり体なりに傷を付ければ、それで勝負は決するのだ。
―― なぜこの男は動じないのだ。いや、内心は恐れおののいているはずだ。気取られぬように平静さを見せているだけだ。いつものように、このまま追い込めばいいのだ。
 気を取り直してじりじりと近付いていく。しかしそれでもムサシの表情は変わらない。いや、薄ら笑いさえ浮かべている。と、思いもかけずに、刀にからめた鎖をムサシにグイと引っ張られた。たまらず梅軒が大きくよろめいた。梅軒には、これ程に力の強い者との闘いの経験がない。
 ザワザワとすすきが揺らぎ一陣の風が二人を包んだ。ほんの一瞬のことではあったが、思わず目を閉じてしまった梅軒は背筋に悪寒を感じた。負けた、と観念した梅軒だった。が、ムサシもまた目を閉じていた。二人の間合いが二間となった時、突然にムサシが梅軒に刀を投げつけた。
「武士の魂である刀を投げ捨てるとは‥‥」 梅軒の呻き声が言い終わらぬ内に、ムサシの素手が梅軒の喉に食い込んだ。ムサシの動きに、何の対処もできぬ梅軒だった。鎌を奪い取ったムサシは、一気に喉を掻き切った。ドクドクと溢れ出る鮮血が乾いた大地に吸い込まれていく。一瞬のためらいもなかった。
 横たわる梅軒から懐中物を取り出したムサシは、梅軒の往生を願うように片手でもって「死にゆく者に不要な銭、生きる者が頂こう。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経…」と骸に念じた。

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