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敏洋’s 昭和の恋物語り
青春群像 ご め ん ね…… 祭り (五)
2023年07月24日
テーマ:テーマ無し
なん組かの親子づれが、子どもにせがまれて列にはいった。そしてアベックがふた組はいり、女子ふたり組もはいっていく。ぼくもまたつられるように友人とともにその列にならんだ。そまつな小屋で、台風が襲ってこようものならたちまちに吹き飛ばされるように見える。つっかい棒がされてはいるが、サーカス場のようなしっかりとしたテント作りではなかった。 ちいさな男の子が列をはなれて横手にまわっていった。すぐに、「コラッ!」というがなり立てる声き聞こえた。むしろをめくって中にでも入ろうとしたのだろうか。
小屋に入ってすぐに、『人魚姫』という看板に出くわした。すこし先になにやらあるようだったが、ぼくのところからはまだ見えない。ときおり間延びするテープの声がきこえるだけだ。「不老長寿のれい薬として珍重される人魚のきもでございます。数おおくの人魚が、心ない人々の犠牲になったのでございます。△▽海の海底ふかくにかくれすんでいたこの人魚、嵐のよるに海面へとうかびあがってまいりました。そこへ沖から命からがらにげもどった漁師につかまってしまったのでございます。そしていままさにきもを取らんとしたそのとき、通りがかったお坊さまが、むような殺生をするでない、とその漁師をさとして助けられたのでございます。そしてその人魚が巡りめぐりまして……」
そのテープ途中でさえぎるようにように、赤らがおの男が口上をのべはじめた。ぼくとしてはいかにしてこの小屋に来たのか知りたかったのだけれど、ギロリとにらまれて、口をつぐまされてしまった。「さあさあ、お兄ちゃんお嬢ちゃんたち。どうぞ静かに見てちょうだいな。大きな声を出しては人魚姫さまがおどろいてしまい、横のあなにおかくれになるかもしれないよ。ああ、だめだめ。大人にはね、見えないのよ。信じる者は救われる。ねえ、かのキリストさまもおっしゃってる。残念ですが、大人には見えません。純真な子どもだからこそ、人魚姫さまがお出ましになるのですよ」
三十センチ四方ほどの小さな箱のまどから井戸のなかを覗きこむものだったのだが、「さあさあ、順番をキチンと守ってよ。さあ見えた人はお次のかたが待ってるからね。はいはい、お行儀よくおねがいしますよ」と、せき立てられた。 中学生である我々を、大人の見るか子どもとあつかうか判断にまよう風だったが、さえぎっていた手を引っこめたのは、うしろにつづく子どもが早くはやくと急き立てたせいだろう。
水面がゆらりゆらりとゆるやかに揺れて、水のそこに人魚姫らしきものが泳いでいるように、たしかに見えはした。度のあわないめがねをかけたときのように、焦点がぼやけた風に感じた。たぶんその底面にフィルムを映写していたのであろうが、まわりが薄ぐらかったことも相まって、その口上の見事さにだまされた。「お父さん、見えたよ。こうやってね、ゆらりゆらりっておよいでたよ」 目をかがやかせる幼い女の子が、うれしそうに父親に話しかけている。ところが、そのうしろにいた小学生の高学年だろう男の子が「あんなもん、うそっぱちにきまってら!」と鼻高々に言った。途端に「余計なことをいうんじゃない!」と、その子の父親に、ごつんとげんこつをもらっていた。
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