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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百七十九) 

2023年07月19日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「ああいたい! でもがまんする。あたしのあかちゃん、だもの。ああ、でもいたい! あかちゃん、あかちゃん、もうすこしおとなしくして。あ、あ、いたい! もういらない。このこでいい、このこだけでいい。あ、あ、いたい、いたい、いたい、いたーい!」「ほら、呪文をとなえてるから。すこしでも和らぐようにって、となえてるからね。がまんするんだよ。$−>+?<]:^{<%*&;”}#?{*+=〜)>(;」 産婆のとなえる呪文は千勢の耳にもとどいているが、やはり意味不明だった。いや、そもそも日本語なのかすら疑わしい。“きっとありがたいものなんだわ。小夜子奥さま、がんばってください”。千勢もまた、小夜子のいたみが和らぐようにと、一心にいのりつづけた。
 じつのところ呪文とは名ばかりで、ただただ唸っているだけにすぎない。気持ちのよりどころを小夜子にもたせることで、いたみから気をそらせようとしているだけだった。しかしそれでも、小夜子にはありがたいお経のように聞こえている。神仏を信じる小夜子ではないけれども、この痛みを抑えてくれるならば、悪魔ですら信仰しかねない。もっとも、出産をおえて陣痛がおわりをつげれば、信仰心などケロリと忘れてしまうであろう小夜子なのだが。
「小夜子ー、帰ったぞー! 今夜はな、お寿司を買ってきた。あわびの良いものが入ったらしくてな、電話をくれたんだよ。なんでも、目に良いらしいじゃないか。……。どうしたんだ! そうか、生まれそうなんだな? よし、病院だ。病院に行くぞ。産婆さん、あんたを疑うわけじゃないが、先生にお願いしてあるんだよ。千勢、ハイヤーーを呼べ。急げ、急げ! 俺は先生に電話するから。えっと、えっと、番号はっ、と。そうだ! 札入れの中に入れてあるんだった。待ってろよ、小夜子。すぐだ、すぐたからな。産婆さん、あんたも同行してくれ。車の中でなにかあったら困るからな。あ、もしもし。御手洗です。妻が、小夜子が産気づきました。えっ? そうです、陣痛でうなっています。間隔ですか? そんなもの、知りませんって! とに角、これから連れていきますから。病院に走りますから先生もお願いしますよ。産婆? ええ、ここにいます。代わるんですか?分かりました、お待ちください」
 産婆に電話を代わると、すぐに小夜子の枕元にすわりこんだ。「痛いか? いたいよな? 待ってろよ、病院に行くからな。さするのか? お腹をさするんだな? よしわかった。俺の力を、小夜子にやろうな。ちょっとお酒がはいっているけれどもな。なあに、男の子だ。酔っ払って生まれてくるのも、案外だぞ。そうだ、名前を決めたぞ。タケシだ、武士と書いてタケシと読むんだ。御手洗武士。どうだ? 良い名前だろうが。侍のように凛々しい男にそだてという願いをこめてだ」「たけし? うん、いいなまえね。どう? あなたみたいなびだんしでうまれてくるわよね」「ああ、大丈夫だ。小夜子とおれの子だ。美男子にきまってるさ」

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