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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百七十四) 

2023年07月07日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 やせ型だった小夜子が、みるみる太っていく。妊婦特有の体型に変わっていく。当たり前のことだと分かっているが、せり出してきたお腹をさすりながら、いら立つ気持ちが湧いてくるのを抑えることができないでいた。その反面、日々成長していくおなかの中の赤子への愛おしさもまた、ふくらんでいく。昼日中にひとりでやすんでいるときに、「よしよし、げんきだねえ、おまえは。そんなにいっぱいけらないでね。おとこのこかしらねえ、おとうさんににるのかねえ。どうだろうかねえ、あかちゃん」 やさしいきもちでひとりごちる小夜子だったが、ふと母親の澄江とを思い浮かべた。「おかあさん。おかあさんもそうおもってくれたの? おとうさんに『あしげにされたんじゃ』って、じいちゃんはいうけど、ほんとだったの? ふこうだったの? あたしをうんでよかったとおもってくれる?」
 めずらしく早く帰ってきた武蔵が、小夜子に懇願し始めた。取引先で聞かされたことが耳からはなれない。普段から元気いっぱいの妊婦が、医者から太鼓判をおされたこともあり、いつもと同じ日々をおくっていたところ、にわかに産気づいてしまった。あわてて産婆を呼んだものの、けっきょくは死産の憂き目にあったという。まだひと月も先のことだしと、おなかの張りや痛みについてかるく考えていたと後悔したとのことだった。
「いいか、小夜子。退屈だろうけれども、家でおとなしくしていてくれ。大事なだいじなあと取りなんだから。その代わりに、小夜子の欲しいものは何でもそろえてやるから。たのむよ、小夜子」 拝むようにいう武蔵にたいして、「男の子と決まったわけじゃないのよ。女の子かもしれないわよ。竹田家では、女の子ばっかりみたいよ。『わしらはとくべつじゃった』って、よく話してたから」と、武蔵の泣き顔をみながらつづけた。「じいちゃんの話では、三代にわたって女の子ばかりが産まれたって。じいちゃんと繁蔵おじさんは、奇跡みたいなもんじゃって、いってたわよ」
「大丈夫だ。御手洗家は、男系だ。女が生まれたって話は聞いたことがない。だから男に決まってる。ま、百歩ゆずってだ。女の子だとしても、特段のことはない。その子に会社を継がせる。女社長だ、小夜子二世さ。いまの時代ではまだ珍しいけれども、やれないわけじゃない。それが証拠に、りっぱに女主人としてがんばっている女性は、世の中に五万といる」
「たとえば旅館業だ。いま、旅館への販路拡大をはかっているけれども、どこも女将がりっぱに切り盛りしている。それに、美容院だ。こうしてみると、客商売に多いな。一般的に、女は大所高所からの判断ができないと言われる。しかしそれは、違うぞ。女だから経営能力がないと言うわけじゃない。そういった教育を受けていないから、その能力が花ひらかないだけだ。御手洗武蔵の子どもには、男であれ女であれ、キチンと帝王学を教えるさ」

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