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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百七十三) 

2023年07月06日 外部ブログ記事
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 それが、つい先月のことだった。もうしないからと謝って、まだ二週間と経っていない。舌の根もかわかぬうちの所業では、いくらなんでもと武蔵自身が思ったのだ。そして今夜、竹田をつれてのご帰還となった。「小夜子奥さま、千勢さん。社長のおかえりです」 玄関先で、竹田が大声で呼ぶ。千勢が台所から、あわてて飛んできた。「旦那さま、どうなさったので? お加減でもお悪いのですか?」 竹田が同伴などとは、体調をくずしたおりぐらいのものだ。千勢があわてるのも無理はない。「なあに、どうしたの? 武蔵、帰ってきたの?」?小夜子が二階から声をかける。
「奥さま、奥さま。旦那さまが、、」。 千勢の悲痛な声がとぶと同時に「社長は大丈夫です。飲みすぎられただけですから」と、竹田が声をかぶせた。「いや、すまん。飲みすぎたみたいだ。今夜は、竹田ら若手と飲んだんだ。将来の幹部社員たちの、いまの気持ちを聞いておこうと思ってな。そろそろ跡継ぎもほしいし、こいつら若手に盛り立ててもらわなくちゃいかんしな。万がいちあと継ぎに恵まれなかったら、だれかにあとを継がせなきゃいかなくなるしな。だから……」
 そんな必死の弁解をつげる武蔵だったが、プイと横を向いたまま「ご苦労さま、竹田。もう帰っていいわ」と、相変わらずの突っけんどんな口調で言った。「はい。それでは、おやすみなさい」と、武蔵の顔を見つつ頭をさげる竹田だった。その竹田を、通りまで千勢が見送った。久しぶりの竹田だったが、こんな遅くにことばを交わすわけにもいかず、「おやすみなさい、気をつけて」と、タクシーに乗り込む竹田をなごり惜しげに見おくる千勢だった。
 家内では、ソファに武蔵をすわらせ、小夜子は床に正座をした。武蔵はソファに寝転ぶようにしていたが、小夜子の異様な雰囲気にきづき、あわてて床に正座しなおした。「いや、悪かった。こんなに飲むつもりはなかったんだ。なかったんだが、あいつらがあんまり嬉しいことを言ってくれるものだから、ついつい。すまん。しかしふた晩つづけてはまずいよな。しかも、小夜子の体調が悪かったのにな」
 頭を床にこすり付けんばかりにする武蔵、機先を制したつもりだった。「あなた、あとつぎぎが欲しいのよね」。思いもかけぬ小夜子の言葉に、けげんな顔付きで「ああ、欲しい。欲しいけれども、俺の気持ちだけでは……」と返事をした。 小夜子の険しい顔つきに、ことばもとぎれてしまう。「できました、赤ちゃん。きょう、病院で確かめてきました」 
 思いもかけぬ話に、武蔵の思考が停止した。というより、小夜子の冷静な話しぶりでは、そのことば自体が伝わらなかった――いや、ことばは耳に届いたのだけれども、その意味が理解できない武蔵だった。“赤ちゃんができた? なんだそれ”

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