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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百五十四) 

2023年05月24日 外部ブログ記事
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 そんな小夜子だから、竹田のお守り役どきには精一杯の我がままを通す。武蔵からのお墨付きが出ているのをよいことに、五平の苦虫をつぶした顔をしりめにいそいそと出かけていく。「竹田。俺が出張のときは、小夜子の面倒はお前がみてやってくれ。社用でないことにも、お前を使おうとするかもしれんが。いや、使うな。とにかく、小夜子を優先してくれ。専務には、俺からいっておく。どうにも、小夜子は専務とはうまが合わんようだからな。ま、よろしく頼むぞ」「分かりました、小夜子奥さま優先でいきます」 当初こそ小夜子を独占していとうらやましがれたものだが、小夜子のわがままぶりをみるにつれ、男性社員たちのやきもちの視線はきえた。
「いいのよ、たまには。武蔵は出張でいないし、千勢には遅くなるからっていってあるから」「ですが、小夜子奥さま。もう陽がかげっています。ご自宅に着くころには、それこそ……」 あわてて、小夜子を制止しようと必死になる竹田だが、そんなことをきく小夜子ではない。鼻であしらって、おわりだ。「いいのよ、竹田は帰っても」。それで終わりだ。むろん、そんなことで竹田が帰ってしまうことはないことは、小夜子にはよく分かっている。竹田にしても、社命とうことだけで従っているわけではない。小夜子には恩義がある。なんといっても、姉である勝子の恩人なのだ。
「なんのために生まれたの? 家族を苦しめるだけだなんて……」。「ただただ病気をせおってだけの、こんなつまらない人生なのね」。厭世主義にでもとらわれてしまったような愚痴を、毎日のようにもらしていた勝子に、華を与えてくれたのが小夜子なのだ。 入院生活でベッドにしばられつづげる日々を送っている。毎日まいにちを、を窓の外から聞こえてくる子どもたちの歓声や華やいだ女子高生たちの会話に、そこに空想の己をおいて目を閉じる日々をすごしている。
 雨の日。なんの喧噪もない、ただただ空虚ないちにちがある。筋のように上から落ちてくる雨に、おのれの身を写してしまう。「なんの疑問ももたずに、上から落ちるだけなのね」。「屋根にあたればそのまま樋のなかに、また落ちこんでいく」。「地面にとどけばそれで終わりならいいのに、『ドロピチャだ』とみんなに疎まれるのにさ」。「でも最期には、海にながれこむのよね。ほかのみんなといっしょに」。「あたしは、あたしは、だれといっしょになれるんだろう……」。最後には無常観にとらわれる勝子だった。

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