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読書日記
『妻紅』 読書日記189
2023年04月26日
テーマ:読書日記
知野みさき『妻紅』角川時代小説文庫
神田職人えにし譚シリーズの2冊目。買った当日に読み終えた私は翌日本屋に行き、少し迷ったけれど残りの四冊をまとめて購入した。本巻は「守り袋」「二羽の雀」「妻紅」の3つの話からなる。
「守り袋」ひ内容案内で縫箔師の咲は、小間物屋の枡田屋に納める財布を仕上げ、散歩の道すがら贔屓にしている蕎麦屋に寄った。見れば、店前で少しやつれた女が中へ入るのを躊躇っている。声をかけると逃げてしまったが、咲は女が傷んだ守り袋を大事そうに手にしていたのが気にかかった。守り袋とは、親が子の無事を祈って子に持たせるもの。そして後日、咲がまた蕎麦屋を訪れると、思わぬ場に遭遇する、という話。実はこの蕎麦屋というのは清蔵という爺さんが孫にあたる孝太を育てながらやっている店であり、この謎の女おつるが店で働くようになっていたのだ。
「二羽の雀」は咲の後ろ盾とも言える枡田屋の美弥とその店に7年間ずっと仕えている手代(実際は番頭なのであるが志郎が遠慮している)志郎の間柄の話で2人とも頑固で認めないのであるが、咲と修次によって結局はお互いがお互いを想う気持ちが相手に伝わり素直になる。「妻紅」とは美弥と志郎が結婚することになり、その固めの式に咲も参列するところから始まる。この作中で修次の死んだ鍛冶屋の兄の話が語られる。妻紅とは鳳仙花のことだそうだが、その謂われは花を摘む際に爪が赤く染まるので世間で師「爪紅(ツマベニ)」と呼ばれているが時には「妻紅(ツマクレナイ)」とも言われるそうだ。本作では咲の作った作品の意匠が妻紅であった。
そして、この三作の合間合間に出て来て、狂言回しの様な役割をしているのがしろとましろで、愛らしくも可愛らしくもある。この本も読みだしたその日に読み終えた。
(2023年4月8日読了)
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