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読書日記
『飛燕の簪』神田職人えにし譚 読書日記188
2023年04月24日
テーマ:読書日記
知野みさき『飛燕の簪』角川時代小説文庫
書店で著者のシリーズが並んでいるのを見て、とりあえず第1巻のみを購入。本巻は2016年に『しろとましろ 神田職人町縁はじめ』として出版されたものを2020年に改題して出版されていて、以後、シリーズ最新巻は今年(2023年)の2月に出ている。
さて、本シリーズは主人公や脇役などは著者の「上絵師律の似面絵帳」シリーズと似ていて主人公は縫箔師の咲。縫箔師は財布や煙草入れなど、身につける小物に刺繡と金銀の箔をあわせて模様を入れる職人である。咲は上絵師の律よりは少し年上に設定されていて気っ風も良く、生活の安定度も律よりはましであるが女職人が世間の偏見と戦いながら道を切り開いていくという構図は同じ。律の恋人涼太に相当するのが飾り職人の修次であるが咲は恋愛には興味が無いという設定で咲は職人として名が通っている修次を(職人として)リスペクトはしているがそれだけ。
もう1つ律のシリーズではミステリ仕立てであるが、こちらには無い。ただ、「しろ」と「ましろ」という7歳ぐらいの双子の兄弟が登場するがどうやらこの二人は「人外のもの」(お稲荷さんの化身?)であるらしいと匂わされるがシリーズを通してその正体を追求することは無い。
本巻は「飛燕の簪」「二つの背守り」「小太郎の恋」の3話で構成されていて、以降のシリーズも3話ずつで構成されている。「飛燕の簪」は咲と修次が知り合うきっかけをしろとましろが作る、という物語の導入部。「二つの背守り」は咲が吉原に売られる姉とその姉を想う弟に手を差し伸べてあげたり、呆けたおばあさんの姉を見つけたり、その間に修次やしろとましろのことを知っていくという話。「小太郎の恋」は大工の小太郎その思いを寄せる相手の話。小太郎は相手の名前も直接聞けないという内気者でどうやらその相手は普請場になった浅草の旅籠・立花に勤める伊代(実は立花の娘)らしい。立花には咲の妹の雪が勤めていて・・どんでん返しが見事に決まる小作品。
ページを繰る手が止まらず、買ったその日のうちに読了した。
(2023年4月7日読了)
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