読書日記

『ねにもつタイプ』 <旧>読書日記1368 

2023年04月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記

岸本佐知子『ねにもつタイプ』筑摩書房(図書館)

著者は前にアップしたルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』の翻訳者。どんな人かと思って検索したら図書館にエッセイ集があったので予約して借りた。

だが、初めの2〜3篇を読んでこれは失敗したかなと思った。エッセイというには訳がわからない文だった。妄想と空想が入り交じり、連想は果てしなく広がっていく。

例えば、「マイ富士」という一篇。
小さい小さい富士山が欲しい。
大きさはそう、裾野の差し渡し三十センチ、標高二十センチくらいがいい。
手に入ったらどこに置こうか。

と、始まるのであるが、途中から

富士があれば、きっと一生退屈しない。だから私は小さい小さい富士がほしい。
名前もつけてやる。男の子だったら富士夫、女の子だったら不二子がいい。
たまには近所の公園を散歩させてやろう。公園デビューの日を思うと、今から少し緊張する。
上手に育てれば、三年ほどで噴火するようになる。
きちんとしつければ所定の場所以外では噴火しなくなるので安心です。

となり、さらに

ご進物に、インテリアに、ビルの屋上に、各種祈願に。ペットとして、受験生
の夜食がわりに。
用途やお好みに合わせてサイズ、種類も豊富に取れそろえております。
着せ替え富士、花柄、ベーズリー、迷彩柄、水玉、タータンチェックの中からお選びいただけます。ドライクリーニング推奨。

締めは
どこかで売っていないものか。小さい小さい富士。

である。こんなエッセイが全部で48篇。読んでいくうちに、著者のペースが判り初め、次第に中毒になっていった。
(2020年9月13日読了)



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