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読書日記
『大一揆』 読書日記187
2023年04月22日
テーマ:読書日記
平谷美樹『大一揆』KADOKAWA(図書館)
角川書店の日本史辞典には巻末・近世の部に「百姓一揆・都市騒擾年表」というものがあり、その中に1853年(嘉永6年)の所に「[場所]盛岡領野田村など90ヶ村[要求]重課/藩政改革、[参加人数]1万6千人、[形態]越訴」とほぼ1行にまとめられた一揆がある([ ]内は私の補記)。
本書はその一揆を小説化したものである。内容紹介によれば
嘉永六年五月。圧政を強いる盛岡藩に抗して民百姓が立ち上がった。彼らを導いた首謀者の一人、三浦命助は、一揆に初めて参加したにもかかわらず数々の策を練って武士を翻弄。藩政への怒り、騒ぎに乗じた憂さ晴らし、取るものもとりあえず―膨れ上がる群衆をも巧みにまとめあげた。時を同じくして浦賀に異国船が渡来する。そのことが交渉の行方にも影響して…。果たして、一揆衆の要求は通るのか?時代の流れに翻弄される百姓たちのドラマを描く、熱き歴史長編!
実は史料によるとこの一揆の7年前の弘化四年(1847年)10月に南部藩では浜岩泉村牛切(現田野畑村)の牛方弥五兵衛総指揮の下に「遠野強訴」と呼ばれる一揆が起こっている。この一揆は成功したかに思われたが後に南部藩は農民との合意を破約し、探索の結果、首謀者の弥五兵衛を捕縛し斬殺していて、一揆で得られた成果は水の泡となっていた。
その経緯を一揆の外側から見ていた命助は「俺ならもっと旨くやれる。」そういう意識で命助は一揆に入り同じ轍を踏まないように注意しながら一揆を指導する。とは言え、初めて一揆に参加した命助は一揆衆の信頼を勝ち得るのに苦労する。命助の戦略は南部藩ではなく隣藩の仙台藩への越訴をするというものであり、場合によっては幕府をも巻き込もうとするものであった。
この戦略は成功し、南部藩対農民一揆側ではなく、南部藩対仙台藩の交渉となり、政治的要求も含めて命助らは勝利し、南部藩の藩政改革をもたらしたのである。
ただ、本書は一連の動きをなんとか小説に仕立てあげた感じであり、最後のまとめ的な部分でも、「三浦命助が逃走中にもかかわらず、京都二条家の家臣という触れ込みで領内に現れたところを捕えられ、盛岡に入牢させられて獄死した。」という史実(?)には触れられていない(←「 」内のことはこの一揆について調べて見て判った)。
(2023年4月5日読了)
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