読書日記

『もし、日本という国がなかったら』 <旧>読書日記1366 

2023年04月19日 ナビトモブログ記事
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ロジャー・パルバース『もし、日本という国がなかったら』角川文庫

著者の『驚くべき日本語』(初版2014年、文庫2020/01出版、読書日記1329)を読み、より著者のことを知りたくなって買った本。前書が日本語論を中心としたものであったのに対し、本書は著者の経歴を辿りながら、世界の中での日本の位置づけをするのであるが「日本という国は世界にとってなくてはならない必要な存在」という裏表紙冒頭の惹句はやや強引かな、という感じた。

というのも著者にとって日本との出会いはまさに「もし、日本という国がなかったら」生きて行けないとも思える様なものであったらしいが、それを世界に広げるとしても著者の言い方は控えめである。また、著者日本語にも堪能であり、日本文化の理解度も非常に高い。宮沢賢治を高く評価して精力的に英訳して世界に紹介したりするほか、多くのの文化人とも交わって交際する著者は真に「世界人」とも言える人物である。何しろ、スプートニクショックからロシア語を専攻し、ポーランドにも留学し、今はオーストラリア国籍を持っている。

本書の目次を写せば
1 ここが、ぼくの国だ
2 驚くべき創造力の国へ
3 世界には、誠実で正直な日本が必要だ
4 日本人も知らない本当の世界遺産とは
5 「5つの日本」
6 1960〜70年代に現れた革命児たち
7 世界にも希有な表現者
8 「戦メリ」の助監督をしてわかったこと
9 日本の文化は「振る舞い」に表れる
10 ここではあらゆる場所が「舞台」である
11 世界が気づいた「無私の心」
12 銀河系を自らの中に意識せよ
13 杉原千畝が世界に示したもの
14 真に非宗教的な先進国、日本
15 日本よ、自らと世界を再デザインせよ

となるが、皮相的な理解での「日本ヨイショ」本では無いことはもちろんであるが、著者の性格からか、(日本の)欠点を述べるのが控えめであるために、逆に日本の長所を述べていても少し割り引いて受け取らねばならないように思えた。

近頃、TVなどでも日本語を話す外国人が増えている様に見えるが、著者によれば、音韻的には日本語は単純であるために、すぐ話せる様になるらしい。ただし、文の読み書きには熟練が必要で、日本語を世界に広めることは世界平和に貢献するだろうという考えは傾聴に値する。
(2020年9月7日読了)



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