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読書日記
『ミナトホテルの裏庭には』 読書日記185
2023年04月18日
テーマ:読書日記
寺地はるな『ミナトホテルの裏庭には』ポプラ文庫
書店の片隅で見つけた本。帯には「笑えなくなったら泊まりに来てください」とあり、裏表紙には
祖父から大正末期に建てられた宿泊施設「ミナトホテル」の裏庭の鍵捜しを頼まれた芯輔。金一封のお礼につられて赴いた先は、「わけあり」のお客だけを泊める、いっぷう変わったところだった。さらには失踪したホテルの猫も捜す羽目になり……。 温かな涙に包まれる感動作。
という次第。扉を開けば「咲くのは花だけではない」「手の中にある」「魔法なんてここにはない」という章名(?)が記されている。冒頭「君は痛みを知っているか。痛みのなんたるかを知っているか。」と始まる。
祖父からミナトホテルに済む湊篤彦を訪ねるべし、と命じられた芯こと木山芯輔(シンノスケ)が湊に5年ぶりに会ったシーンである。挨拶もしないうちに、湊しなぜか階段から転げ落ちてきて「骨が、骨が」と悲鳴をあげ気絶する。ということで芯は救急車を呼んだ・・
さて、amazonの内容紹介ではこうだ。
大通りから入った閑静な地に佇む通称「ミナトホテル」は、大正末期に建てられたキャラメルのような見た目の宿泊施設だ。館内には四季折々美しい花が飾られ、骨董家具が設えられた六つの客室は防音仕様。看板を出していないのに、人知れず「眠れない」「食べられない」お客が集い、時には長期で滞在する者たちも―。
芯の祖父はミナトホテルのオーナーであった陽子さんと友人であり、その陽子は1年前に死んだ。ホテルは湊が受け継いだが後始末の一つとしてホテルの裏庭に通じる扉の鍵を探してくれというのが芯への依頼内容であった。それに加えて芯は足を怪我した湊に代わりホテルのフロントを手伝いなぜか「平田カラメル」という姓名を持つ猫の行方も追うことになる。
死んだ陽子さんと祖父、そして2人と同級生であった福田さんという爺さん、そして美千代さんという婆さんなどが月に一度は集まってよもやま話をしていたらしい。物語の中心は死んだ陽子さんとその一周忌の準備の話であり、その合間にミナトホテルにたどり着く不思議な客たちの話である。何しろその客たちの多くは「グッスリ眠るため」に宿泊するのである。
人間関係は複雑な中で緩い感じ(だが無い様は案外に重い)の語り口で、時々差し挟まれる箴言が効いている。例えば「愛嬌というものは自分より強い者を斃す柔らかい武器だよ」(作中では漱石『虞美人草』の中野一節として語られる)とか「夫婦っていうのはね、家の中でじーっと顔を顔をつきあわせていると、かえって仲が悪くなってしまうのよね」(美千代の言)、特に後者は私が常々思っていることでもある。
著者の他の本も読んで見たくなるような話であった。
(2023年4月1日読了)
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