メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 新(三百三十九) 

2023年04月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 武蔵の訓事後、いっせいに営業が飛びだした。事務職たちも、すぐに電話攻勢にでた。営業それぞれが今日にはまわりきれない取引先に対して、おまけ作戦をにおわせた。「こちら、富士商会でございます。じつは、耳よりの情報がございまして。順次営業がおうかがいしまして、ご説明をさせていただいております。きょうにもご入用でない商品でございましたら、ご発注の方はお待ちいただけますでしょうか。ご不信はごもっともでございますが、お客さまにたいする感謝の気持ちをこめたことでございます」 五平と竹田のふたりは別室に入り、仕入先にたいする値引き交渉の段取りにはいった。血をながす覚悟をしたとはいえ、傷はちいさいに越したことはない。即金支払いとの条件で、二ヶ月間のみの限定値引きを持ちかけることにした。資金繰りを危ぶむ五平に対し「銀行から引き出してくる。四の五の言うようなら、奥の手だ。支店長の金玉をにぎっているからな、俺は」と、意に介さない。
 武蔵が意図したごとくに、経営状態のかんばしくない店だけが日の本商会に集まった。「そうかい、瀬田さんの娘さんとはな。よし、俺も男だ。応援しようじゃないか!」と、判で押したような同情の声をかけられた。大量の商品を買いこんでみせる店やら、別の店を紹介してやる者もでた。しかしそれらの共通として、支払期日にほとんどが馬脚をあらわした。一部の支払いでごまかす店、期日の延期を申しでる店。そしてそのまま雲がくれした店も出た。結局日の本商会は、ふた月ののちに音をあげた。もともとが無理な価格設定だった。さらには、納入商品のなかに粗悪品が混じりこんでいたことが発覚して、あっという間に信用をなくしてしまった。富士商会が画策したという話がちらりと出はしたが、すぐに立ち消えてしまった。
「やった、やった!」と戦勝気分にわく富士商会。その裏で、日の本商会は悲惨のかぎりを尽くしていた。資金調達に無理を重ねて、裏筋の金融にも手をだしてしまっていた。妹三人が、店をたたむと同時に苦界に身を落とした。しかし長女の社長本人だけが行方不明となった。どこかの山中で首をつったという話や、北の北海道にわたった、いや南の沖縄に飛んだという噂話が飛びかったが、その実は分からずじまいに終わった。そしてこのことが、武蔵の将来に大きく関わってくることになった。

>>元の記事・続きはこちら(外部のサイトに移動します)





この記事はナビトモではコメントを受け付けておりません

PR







掲載されている画像

    もっと見る

上部へ