読書日記

『一人で生きる勇気』 読書日記184 

2023年04月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

ドロシー・ギルマン、柳沢由美子訳『一人で生きる勇気』集英社文庫

この本については何から書けば良いのか?

著者であるドロシー・ギルマン(1923年生〜2012年没)は米国の作家であり、スパイ小説「ミセス・ポリファックス(おばちゃまはスパイ)シリーズ」で一世を風靡した。と言っても、米国でこの全14冊のシリーズが刊行されたのは1966年〜2000年であり、日本では1988年〜2000年である。その他にも『バックスキンの少女』、『メリッサの旅』『伯爵夫人は超能力』『古城の迷路』などの作品があり、日本ではすべて柳沢由美子が翻訳している(『おばちゃまは飛び入りスパイ』のみ角川からも別題での翻訳が出ているらしい)。

で、本書は米国では1978年、日本では単行本が2003年に出版(文庫化は2007年)されたもので原著出版から45年、翻訳の出版からでも20年が経っている。内容は単純化してしまえば、ひとりで生きていく時に生じるおそらく男性には想像もつかないであろう余計な苦労と向き合いつつ、厳しい自然の中で暮らした記録である。

著者は1945年に教職に就いていた男性と結婚し、二子をもうけるが、1965年に離婚。二子を育てて次男が大学に入るために家を出た2週間後に都会を離れてカナダのノヴァスコシア州の海辺の田舎の村にひとりで移り住む。作家活動を始めていて、そこそこの収入があったために10エーカー(約4万u:今風に換算すると東京ドームより少し小さいがほぼ同じ広さ)の土地を1万ドルあまりで入手し、自由と孤独の二つも手に入れる。

このエッセイには、アメリカ社会における女性差別や偏見、それに対する著者の憤慨が率直に吐露されている。結婚していない女性、離婚した女性。女手一つで子供を育てる女性を社会が冷遇することにギルマンは怒っている(訳者あとがき、より)。

私がこの本を読んだのは偶然である。文庫刊行後まもなく本書を購入した私はこの本を読まずに「積ん読」していたのであるが、たまたまそれらの本を整理していて再発見。ギルマンの著作の内には、こうした女性差別に立ち向かおうとする女性の姿が多く見られるので、改めて興味を持った次第である。それにしても、『コードガールス』でも感じたことであるが1970年代になってのアメリカですら女性差別が激しかったということには驚いてしまう。ましてや、現代日本でも陰に日向に出てくる差別の数々を思うといたたまれなくなってしまう。
(2023年3月31日読了)



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