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読書日記
『グッドバイ』 <旧>読書日記1363
2023年04月13日
テーマ:<旧>読書日記
朝井まかて『グッドバイ』朝日新聞出版(図書館)
本書は2018年4月6日から2019年3月29日まで朝日新聞に連載されたもの。およそ3ヶ月ぶりに著者の作品を読んだが、前作が実際の事件の小説化であり、今作も維新期に実在した女性商人の話である。
主人公は長崎の大浦屋を継いだお希以(ケイ)のちに慶応の年間に慶の字を使うようになり屋号から大浦慶と名乗った女性である。生家は由緒ある油商人であったが、安い油が流通するようになり油商は先細りと見て取って、外国人相手に茶葉の輸出を始め、大成功を収めた人物であり、楠本イネ・道永栄と並ぶ長崎三女傑のひとりだそうだ(楠本イネはシーボルトの娘で日本人女性で初めて産科医として西洋医学を学んだことで知られ、道永栄は稲佐の出身でロシア人相手のホテルなどを経営して成功した人)。
イギリスの商人、W・J・オールトを相手にして茶葉の輸出を始めたいきさつや、坂本龍馬や大隈重信、グラバーらとも親交があったこと。成功した後に詐欺に遭って「遠山事件」として知られるようになったこと。死ぬ直前に明治政府は慶に対し、日本茶輸出貿易の先駆者としての功績を認め、茶業振興功労褒賞と金20円を贈ったことなど史実に沿った話であるのだが、茶商としての成功にいたる過程などは比較的あっさり書かれている。
登場人物として慶の若い頃の番頭弥右衛門やその後を継いだ友助、お慶の父で店を捨てて逃げ出した父親の太平次と異母弟亥之二なども出てくるが、小説として慶の生涯が波瀾万丈であることに頼りすぎているという感じがする。
なんと言うか、実話という大枠が決まっていてそこから離れられないと感じる。
(2020年9月1日読了)
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