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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百三十二) 

2023年03月14日 外部ブログ記事
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 小麦色にやけた小夜子に、富士商会の面々がいちようにおどろいた。「小夜子さま、大変身ですね」「すごく健康的で、いちだんと美人に見えますです、はい」「小夜子さまなら、ミスユニバースに、あ、だめか。ミセスなんだ、もう」 口々に褒めそやす。その一人ひとりに「ありがとう、お世辞でもうれしいわ」と、応える小夜子。武蔵はうんうんと頷いている。
「みんな聞いてくれ。小夜子を、社長づき営業部員とすることに決めた。かんたんに言えばだ、接待役だな。交渉事はしないけれども、場に同席させる。どんどん取引先を、会社に引っ張って来い」「やったあ!」「うわあ、すてきい!」「よおし、これでもう! だぜ」 ばんざいをする者、こぶしを突きあげる者、拍手をする者。そして、泣きだす者さえでた。
「おいおい、どうした。泣くことはないだろうが」「だって、だって……。これでもう、悪口を言われずにすむかと思うと。嬉しくてうれしくて、なみだが、かってに出ちゃうんです」「そうか、そうか。女子社員には、苦労をかけるな。 いやがらせの電話がときどき入っているらしいが、もう大丈夫だぞ。そんな電話はな、みーんな小夜子にまわせ。ガツン! としかってくれるさ」 とつぜんに話をふられた小夜子、事態がのみこめずにキョトンとしている。
「そんなこと、できません! 大丈夫です、もう。今度かかってきたら、言いかえしてやりますから。くやしかったら会社においでなさい、って。お姫さまに逢いにおいでって、やさしくいってやります。」「そんなこといって、ほんとに来たらどうするんだよ」「えっ、えっ、どうしよう、どうしましょう」 掛け合い漫才がはじまり、どっと笑いがおきた。「こらこら。そんなときは、男どもが撃退しろ。女性をまもってやれない男なんて、こんりんざい、嫁さんをもらえないぞ!」 武蔵が突っこむと、笑いがさらに大きくなった。
「それなんだけどさ、うちの男どもはみんな、きゃしゃだもんね。守ってもらえそうにないわ。やっぱりあたしたち女が、一致団結して撃退しましょう。でも、小夜子さまはだめ。お姫さまは、奥の院にいてもらわなくちゃ」「ううん、あたしもやるわよ」と、小夜子が前に進みでた。「お姫さまを矢面に立たせたとあっちゃ、あたしの女のこけんがすたるわ。あたしが、でんと入り口に仁王立ちして阻止してみせるから」。大女、おおんなとからかわれている女子社員が、仁王立ちをして見せた。「そうそう、うしろにはあたしたちがいるから。安心して、きっと骨はひろってあげるから」 気勢のあがる総勢六人の女子社員。小夜子を含めて、七人の女侍が誕生した。
「こら、男ども! 情けないぞ! 女性にあんなことを言わせてもいいのか? おまえら、一生、女の尻にしかれることになるぞ! しっかりしろ、まったく。よーし。男たちで、トキの声をあげるぞ」 五平の音頭とりで、「えいえい、おー!」と、声がひびいた。なにごとかと、通行人がのぞき込むほどに、富士商会が燃えあがった。

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