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敏洋’s 昭和の恋物語り

歴史異聞 鼠小僧次郎吉 〜猿と猿回し〜 (六)捕縛! 

2023年02月13日 外部ブログ記事
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「コトッ」裏木戸は、やすやすと開いた。次郎吉は、ニヤリとほくそ笑みながら、足音を押さえて中に入った。勝手知ったる何とやらで、次郎吉は何の苦もなく長局奥向に続く廊下に足を乗せた。と、どこから見ていたのか。足を乗せた途端、隠れる間もなく武装した腰元らが、奥の部屋から並び出てきた。
不意のことに次郎吉は一瞬たじろいだが、すぐさま気を取り直すと一目散に裏木戸から逃げ出した。「なんてこった!」と、口走りながら塀に沿って走りつづけた。成功するに決まっていたこの盗みが、なぜバレていたのか。次郎吉には、どうしてもあの腰元が裏切ったとは思えなかった。
角を左に折れて、もう大丈夫だと思った途端、運悪く南町奉行所の見回り同心に見とがめられてしまった。逃げる間もなく召し捕らえれ、後ろから追いかけてきた腰元たちにより、悪事が露見してしまった。
取り調べでは、知らぬ存ぜぬを押し通した。盗みを働く前だったことで証拠品はなく、腰元たちへの詮議も「無礼者!」のひと言でなくなった。しかし奉行所にも、面子がある。捕らえた次郎吉を、腰元たちへ引き渡すことはなかった。
元大阪町専助店の次郎吉という名前で入牢した。吟味の折りに、前年七月以来千住在その他の野天で丁半・ちょぼ一などの博打をして暮らしてきたが、二月三日のあの夜は、中間の安五郎という知人を訪ねたものだと言い張った。そしてたまたま裏木戸が開いていたので入り込んだと、切々と訴えた。
屋敷内をうろついている所をあの腰元達に見とがめられ、恐ろしさのあまり逃げ出しただから、盗みなどを考えていたのではない、と言い張った。土屋家に安五郎などという中間は居ないなど、色々と矛盾がありはしたものの、さほどの吟味もなく、五月二日、入れ墨中追放となった。
次郎吉は、喜び勇んでその後上方へ、裏事情を知ることもなく移った。実の所、あの腰元は、覚悟を決めて古株の腰元に全てをうち明けた。そして古株の腰元も、廻船問屋のこともあり次郎吉との事情は伏せた上で、留守居役に届け出た。留守居役としては、次郎吉を捕らえた後に内密に処理するつもりであったが、腰元達の勇み足により南町奉行所扱いになってしまった。屋敷外で捕縛されては、いかんともしがたい。
慌てた土屋相模守が、幕府の重職に泣きついた。大名屋敷に一盗人が易々と侵入したという不名誉だけは、表沙汰にしたくなかったのである。そしてそのことが、老中水野忠成の耳に入った。吟味の内情が逐一報告され、どうやら町人の間で評判の鼠小僧ではないかと、南町奉行所では色めき立った。しかし入れ墨中追放の軽い処分にと、圧力がかかったのである。
それは、寛政四年以来の松平定信の対露政策の失政や、貨幣の質の低下・商人に対する圧政による、町人の人心の動揺・不満を抑えるためであった。文政の改鋳は悪評だった。それもその筈で、金銀等の出目を減らすことにより、その差益を得るという目的の貨幣の改鋳だからだった。
ねずみ小僧の盗みに拍手喝采を送っている町人を刺激することを恐れたのである。大名屋敷のみを襲うねずみ小僧の仕事ぶりが瓦版で揶揄される度に、幕政への不満が和らいだからであった。
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