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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百十八) 

2023年02月09日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「誇りよ、自尊心よ。そうね、自分を信じる思いでもあるわね。よくいるでしょ、『あたしなんかどうせ・・』って愚痴をこぼす女が。自分で自分を卑下してどうするの! そう言いたいわ。『貧乏人だから、片親だから、学校を出ていないから……』。色々言い訳をするけれど、そんなの自分を信じていないからよ。『おかめみたいなあたしなんか』ですって? 冗談じゃないわ! 女を顔で評価する男って、最低よ。それを受け入れる女もまた最低よ! 男に媚びてどうするの。しっかりしなさい! って、いいたいわ」 舌鋒するどく語る小夜子に、勝子もたじろいでしまう。これ程に激しい小夜子を、勝子は知らない。毅然とした立ち居ふるまいをする小夜子ではあるが、今日のいまの小夜子は激しすぎる。
「怒ってるの? 小夜子さん。だったら謝るわ、あたし。ごめんなさいね、馴れ馴れしくし過ぎたみたいね。分もわきまえないで、ほんとにごめんなさい」 肩をすぼめて小さくなる勝子に、あわてて小夜子がいった。「ちがうの、勝子さんに怒ってるんじゃないの。勝子さんをジロジロ見てるあの女性たちに、腹が立ってるのよ。新しいものにたいしていつも反発するあの女性たちに。そのくせ誰か有名人がみとめると、手の平をかえすように賞賛して。きのうまで敵対していたのに、きょうは大拍手みたいな。あたしもね、初めのころは同じだったの。ジロジロ見られて、眉をひそめられて。でも、あたしは負けなかった。キッと睨みつけてやったわ。『文句あるの!』って、心のなかで叫んだりして」
「小夜子さんらしいわ。でも、そういわれれば、あたしもそうだったかも。小夜子さんとこうして親しくしてもらえなかったら、たぶん小夜子さんのこと、良くは思わなかったと思うの。ごめんなさいね、こんなこといって。ひがみなのよ、ひがみ。わかってるのよ、ほんとはね。でも、小夜子さんがいったみたいにね、『あたしなんか、どうせ』の口なの。努力もしないで、やっかみで文句をいうのよ。居るでしょ、文武にすぐれた人って。その人が男性ならね、憧れになるのよ。もちろん女性でも、憧れる人はいるわ。その人は特別ね。神さまみたいなもの。ただ、心のどこかで反発する気持ちもあると思うの。『あたしだって、金持ちの家に生まれていれば……』なんて思っちゃうのよ」
 勝子の本音だった。 いまの境遇に不満をいだいてる己を、小夜子にはかくしたくない。小夜子に嫌われるのではないかと思えることでも、小夜子に軽蔑されるかもしれないと思えることでも、ことばにし行動にうつしたいと考えてみたりもした。しかしその思いを強くすればするほど身がすくんでしまう。凛としたすがたの小夜子を思い浮かべて、“新しい女、新しいおんな、あたらしいおんなになるの”と呪文のようにとなえてみる。だめだった。小夜子を思い浮かべてしまうと、とたんに萎えてしまう。結局は、小夜子からのがれられない勝子だった。

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