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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(三百) 

2022年12月21日 外部ブログ記事
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 ひとつひとつのことばに、竹田の無念さがこもっている。三代つづく、老舗の一つに数えられている金物店ではあった。初代、二代目と順調に業績を伸ばす店ではあった。三代目にしても腰が低く働き者だと評判のたつ好人物ではあった。が、その好人物ゆえの、店の傾きだった。従業員たちに対して、厚遇をつづけたことが命とりになってしまった。取引先から「そこまで店の者を甘やかすのは、どうなんだろうね」と苦言を呈されることもままあった。結局は、たちの悪い業者にだまされて、金をつかまされた従業員の裏切りもかさなり、一気に資金繰りが悪化してしまった。
 そんな中ほとんどの業者が逃げにかかっている店に対して、売れ筋の製品を富士商会がまわした。「これで挽回できるだろうが、慎重にやんなさいよ」。武蔵のかけたことばに、「恩に着ます」と、深々と頭をさげた。ところがその製品まで、だまし取られてしまった。甘っちょろい三代目、とばかりに悪徳業者たちの餌食になってしまった。「それでしばらくして倒産して。それがなんで、富士商会のせいなんだよ! 社長の温情なんだぜ、その取引は。一回こっきりのことだって、相手も承知していたんだ。社長の判断は正しいんだ。夜逃げしたからって、それが富士商会がつぶしたってことになってしまって。ぼく、くやしいんだ。集金に行く先々で、嫌味を言われて」「ひどいわ、そんなの」
 憤懣やるかたないといった表情の小夜子、我が意を得たりとばかりに竹田の舌鋒がするどくなる。「資本主義のなんたるかを、まるで理解していないやからの愚痴ですよ。許せないです、ほんとに。みんな憤慨しています、ほんとに。我々の努力がどれほどのものか、まるで知らないくせに。『富士商会の通ったあとには、ぺんぺん草が生えてる』なんて、こんな酷いことを言う者もいるんです。ですから、小夜子奥さまに、会社の前面に立っていただきたいんです。シンボルになっていただきたいって、みんなで社長に直談判したんです。取引先を、小夜子奥さまに会わせていただきたいって。にこやかに微笑んでいらっしゃる小夜子奥さまを、見せていただきたいと」
「ちょっと、勝利! それじゃ、なあに? 小夜子さんに、見世物になれって言うの!」 勝子が怒り出した。その剣幕たるや、怒髪天を衝く勢いだった。「そんなの、あなた達の努力不足でしょうが。 どうして小夜子さんがあなた達の不始末の尻拭いをしなくちゃいけないのよ! 許せないわよ、そんなの」「いや、姉さん。そんなことは……」「そんなもこんなもあるもんですか! 小夜子さんを何だと思ってるのよ、あなた達は。社長も社長よ。そんなことを言わせるなんて。あーあ、幻滅したわ。もっと男らしい方かと思ってたのに」

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